2012 Fiscal Year Annual Research Report
樹木年輪中放射性炭素14濃度測定による過去の宇宙線強度の復元
Project/Area Number |
12J03218
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三宅 芙沙 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 宇宙線生成核種 / 放射性炭素 / シュワーベサイクル / 宇宙線イベント / Solar Proton Event |
Research Abstract |
今年度の申請当初の予定は、西暦775年宇宙線イベントと7世紀太陽活動極小期における周期解析の2つの論文投稿と、1800年代と6-11世紀の^<14>C濃度の測定、さらに775年イベントの原因追求を行うというものであった。測定の目的としては、1800年代については有史時代最大と言われているタンボラ火山の^<14>C濃度に与える影響の調査、また6-11世紀については誤差を小さくしてシュワーベサイクル(平均11年の太陽の代表的な周期)の議論をより明確に行うことである。今年度の予定は全て実施され、これに加え、他の年代の^<14>C濃度の測定、西暦993年宇宙線イベントについての論文投稿、さらに^<10>Beの測定など新たな研究も実施した。 2種類の屋久杉を用いた再測定や、モデルとの比較等を行い、西暦775年宇宙線イベントについての論文はNature誌に掲載(Miyake et a1.2012)された。また7世紀極小期における周期解析の論文を投稿し査読中である。775年イベントの論文では、その原因特定には至っておらず、論文発表後いくつかの研究において原因の議論がなされている。原因の有力な候補とされているのは、銀河系内で発生したショートガンマ線バースト(Hambaryan & Neuhauser,2013)もしくは、太陽でのSolar Proton Event(Melott & Thomas,2012)である。6-12世紀における測定により、西暦993年の宇宙線イベントも検出した。このイベントは775年イベントに次いで、2例目に見つかった急激な^<14>C濃度の増加であり、これにより^<14>Cイベントの発生頻度がより正確に定まった。観測によりわかっているショートガンマ線バーストの頻度と比べると、^<14>Cイベントの発生頻度がはるかに大きいことが明らかになり、現時点で考えられる^<14>Cイベントの原因はSolar Proton Eventがもっともらしいと言える。2例目の^<14>Cイベントの検出から、他にもたくさんの^<14>Cイベントが存在する可能性が示され、宇宙線生成核種を用いた研究に新たな視点をもたらした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の予定は全て実施され、これに加え、他の年代の^<14>C濃度の測定、西暦993年宇宙線イベントについての論文投稿、さらに^<10>Beの測定など新たな研究も実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
さらなる年代における^<14>C濃度を測定し、他にどの程度^<14>Cイベントがあるかどうか確認する。 また、24年度には^<14>Cイベントの原因追求のため、^<14>Cと同じ宇宙線生成核種である南極アイスコア中に含まれている^<10>Beの測定も行った。サンプルは国立極地研に保管されていたコアを用いて、弘前大との共同研究でサンプル前処理を行い、東京大学タンデム加速器研究施設(MALIT)で^<10>Be/^9Be同位体比の測定を行った。25年度には測定を終え、^<14>C、^<10>Be双方から、宇宙線イベントの検証を行う予定である。
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Research Products
(15 results)