2012 Fiscal Year Annual Research Report
温度勾配によって駆動されるコロイド粒子の非平衡輸送現象
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12J03258
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 洋平 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非平衡統計力学 / 熱力学 / ゆらぎ / エントロピー / 粗視化 / 熱機関 |
Research Abstract |
ブラウン運動をするコロイド粒子に適切な力学的ポテンシャルと温度勾配とを加えると、方向性のある運動が生じて温度差から仕事を取り出すことが出来る。この運動を実験的に観察することを目指して研究を行い、実験結果の物理的意味を解釈する上で重要となる結果を得た。 まず、実験の前段階として実験系を想定したパラメータ領域での数値実験を行った。粒子の動きだけではなく熱のやりとりにも着目すると、どのようなスケールにおける基礎方程式を出発点として選ぶかに応じて、異なった結果が導かれることを見出した。実験において観察できるのは慣性の効果が見えないような、いわゆるオーバーダンプトのスケールに限られているため、実験結果の解釈が系を記述するスケールに依存していることは大きな問題であると考え、この問題についてさらに詳しく調べた。 コロイド粒子のブラウン運動を記述するランジェバン方程式の場合には、2つのスケールの間の不一致が定常的に流れる熱に起因するものであることを解析的に導いた。この結果は数値実験の結果とも整合している。また、ゆらぎが顕著な系で一般的に同じ議論が適用できるかを、マルコフ性を持つ確率過程について調べた。そして、系を構成する速い自由度と遅い自由度の2つの時間スケールが十分に分離している場合には、解釈のスケール依存性は定常的に流れる熱が原因であることを示した。これらの結果は論文にまとめたが、現在査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画では実験系の構築がもっとも困難であるだろうと予想していたが、実際には実験結果の解釈という理論的な部分にも難しい問題が存在していたことが今年度の研究で判明した。数値的な予備実験によって事前に理論的な問題の存在を発見したことと、その後の理論的な考察によってどのような解析を行えばその困難を回避することができるかが明らかになったことによって計画の理論的側面については不明瞭な点はほぼなくなった。そのため、当初の予定とは多少ことなってはいるが、「研究の目的」の達成に向けては極めて順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の理論的側面についての問題は解決したので、当初の計画にしたがって実験系の構築に力を入れる。
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Research Products
(5 results)