2013 Fiscal Year Annual Research Report
温度勾配によって駆動されるコロイド粒子の非平衡輸送現象
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12J03258
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 洋平 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非平衡統計力学 / 熱力学 / ゆらぎ / エントロピー / 粗視化 / 熱機関 |
Research Abstract |
これまでの研究で得られた「全系のエントロピー生成が系を記述するスケールに依存する場合でも、波多野・佐々過剰エントロピー生成と系のエントロピー変化との和は不変に保たれる」という結果を踏まえて、より実際の実験において有用であるような関係を探求した。波多野・佐々過剰エントロピー生成は、熱力学第二法則と類似の不等式を満たすことが示されているが、形式的な定義により与えられるため物理的意味は必ずしも明らかでなく、特に系の記述が運動量のような時間反転に対して反対称な変数を含む場合にはその定義および成立する不等式の物理的意味がはっきりしなくなるという問題があった。そこで、当該年度ではエントロピー生成の値のみから定義される実験的にアクセスすることが容易な過剰エントロピー生成(ここでは素朴過剰エントロピー生成と呼ぶ)に関する法則を模索した。 具体的には、異なるスケールで系を記述する場合にも素朴過剰エントロピー生成と系の定常状態エントロピーの変化分との和が一定の(無視できる大きさの)誤差の範囲内で一致することを示した。この結果が成り立つための条件として、系を構成する速い自由度と遅い自由度それぞれの時間スケールが十分に分離していることに加えて、確率密度関数が時間反転対称操作に対してある種の対称性を持つことが必要になることが分かった。 また上記の研究と平行して、温度勾配のみによって起こる輸送現象(ソーレ効果)に関する実験も行った。熱拡散型強制レイリー散乱法を用いて、溶媒に高分子を添加することによってソーレ効果の大きさ・向きが変化するコロイド粒子溶液系の測定を行った。石英コロイド粒子を試料として測定を行った結果、コロイド粒子の実効的なソーレ効果の大きさがこれまでポリスチレン粒子の場合に知られていた振る舞いとは異なる高分子濃度依存性を示すことを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験結果の解釈に必要な理論的枠組みは、当該年度までの研究でほぼ完全に明らかになった。得られた枠組みは実験に適用可能であるだけでなくそれ自体も興味深い構造を持っており、この点において本研究は極めて順調に進んでいると言える。実験については予定より遅れているが、コロイド粒子/高分子の溶液系において各成分のソーレ効果を測定するなどの今後発展が期待できる結果が得られており、全体としては順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
新しいタイプの実験系の構築に力を入れる。その実験系を用いて、コロイド溶液系のソーレ効果を系統的な測定を行う。
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Research Products
(4 results)