2012 Fiscal Year Annual Research Report
現実的核力に基づいた超新星爆発シミュレーションのための核物質状態方程式の作成
Project/Area Number |
12J03275
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
富樫 甫 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 核物質 / 状態方程式 / 多体変分計算 / クラスター変分法 / 超新星爆発 / 中性子星 |
Research Abstract |
現実的核力に基づく超新星爆発シミュレーションに適用可能な核物質状態方程式(EOS)作成のために、以下の研究を行った。まず、非一様相のThomas-Fermi(TF)計算に必要となる一様核物質自由エネルギーのデータテーブルの作成に取り組んだ。今年度の研究で、TF計算を十分な精度で収束させるために必要な自由エネルギーデータは、温度、密度、陽子混在度の組でおよそ970万ポイントになることがわかり、高エネルギー加速器研究機構のスーパーコンピューターIBM Blue Gene/Qを利用した大規模数値計算を行うことで、この970万ポイントにも及ぶ自由エネルギーデータテーブルを完成させることができた。 次に、今まで作成してきた核物質EOSにα粒子の混合を考慮する研究を行った。α粒子は有限体積を持つ相互作用の無い古典的粒子として扱い、自由エネルギー密度を最小にするようなα粒子の混在度を決定することで、核子系との混合状態のEOSを作成した。 更に、今年度は一様核物質相のEOSテーブルを完成させ、超新星爆発シミュレーションのテスト計算に利用した。ただし、非一様核物質EOSは現在作成中ため、今年度のテスト計算では非一様核物質相に対しては、相対論的平均場理論に基づいたShenらによるEOSを代用した。超新星爆発シミュレーションについても、比較的容易な球対称断熱計算のみを行った。テスト計算の結果、シミュレーションは途中で止まること無く計算を実行することができた。そして、数値シミュレーションの結果をShen-EOSの場合と比較すると、コアバウンスが生じる際の中心密度や爆発エネルギーを始め、多くの熱力学量に違いが出ることがわかった。現在まで様々な熱力学量を比較した結果、本研究で作成している核物質EOSは、ShenらによるEOSに比べて柔らかい傾向にあると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膨大な数値データになると予想された、非一様相のThomas-Fermi計算に必要となる一様相の自由エネルギーデータを完備することができたため、研究目的を達成する為の残された課題は、Thomas-Fermi計算による非一様核物質相の状態方程式作成のみとなった。また、超新星爆発シミュレーションのテスト計算もすでに行っているため、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に作成した一様相の自由エネルギーデータテーブルを用いたThomas-Fermi計算によって、非一様相の状態方程式テーブルを完成させる。この際には、計算コードの改良と計算機環境の確保等も行い、データの完備に努める。また一様相の核物質状態方程式については、低温高密度の場合に数値計算精度の不安が残っているため、そのチューニングも行う。これによって、現実的核力に基づいた超新星爆発シミュレーションのための核物質状態方程式テーブルが完成する。その後は、ニュートリノ反応まで考慮した超新星爆発シミュレーションや他の天体現象の数値シミュレーションに状態方程式テーブルを適用し、先行研究との比較を行う。
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Research Products
(4 results)