2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間コミュニケーションを介した組織成長制御システムの遺伝的基盤
Project/Area Number |
12J03297
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大澤 志津江 神戸大学, 医学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 細胞間コミュニケーション / 細胞非自律的増殖 / ミトコンドリア / ショウジョウバエ |
Research Abstract |
近年、組織中の細胞がその周辺細胞の増殖を"細胞非自律的"に制御する機構が器官形成や再生、さらにはがんの発生・進行過程において重要な役割を果たすことが分かってきた。しかしながら、このような細胞間コミュニケーションを介した組織レベルでの増殖制御機構を制御する分子機構はいまだほとんど不明である。本研究では、ショウジョウバエ上皮をモデル系として用い、このような細胞間コミュニケーションを介した組織レベルでの増殖制御機構を成立させる分子基盤の解明を目指す。平成24年度は、細胞非自律的な増殖を引き起こす遺伝子群を遺伝学的スクリーニングにより網羅的に探索した。具体的には、ショウジョウバエ成虫原基の上皮組織においてがん遺伝子Rasを活性化した細胞群を誘導し、これらの変異細胞に対してさらなる突然変異を導入することで、変異細胞自身ではなくその周囲の正常細胞の増殖が誘発する突然変異体(nag, non-autonomous growth)を単離・同定した。その結果、興味深いことに単離された多数のnag変異体がミトコンドリァ呼吸鎖複合体に関わる一連の遺伝子群をコードしていることが明らかとなった。このことは、Rasシグナルの活性化とミトコンドリァの機能障害が協調することで、Rasの本来の増殖シグナルが細胞非自律的な増殖シグナルへと変換されることを意味している。そこで我々は、このようなミトコンドリア機能障害を介した増殖シグナル変換機構を遺伝学的に解析した。その結果、Rasシグナルとミトコンドリアの機能障害が協調すると(1)酸化ストレスが引き起こされてJNKシグナルが活性化すること、さらに(2)このJNKシグナルがRasシグナルと協調することでがん抑制経路Hippo経路が不活化されて分泌性因子UpdやWgが発現・分泌し、これにより周囲細胞の過剰な増殖が誘発されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記遺伝学的スクリーニングが予想以上のスピードで進行し、細胞非自律的増殖を引き起こす一連のnag異体を単離することに成功した。さらに、ミトコンドリアの機能障害がRasの活性化が同時に起こることで細胞非自律的な増殖が誘導されることとその分子メカニズムの一端を明らかにすることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞非自律的増殖を制御する遺伝子群をターゲットとした第2の遺伝学的スクリーニングを展開することで、ミトコンドリア機能障害とRasの活性化により引き起こされる細胞非自律的増殖の分子基盤を明らかにする。また、ミトコンドリア呼吸鎖複合体以外をコードする他の,変異体についても同時に解析を進める。これらの解析から得られた結果を統合して細胞間コミュニケーション機構を介した組織成長制御機構の理解を目指す。
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Research Products
(16 results)