2012 Fiscal Year Annual Research Report
慢性ストレスによる不安、抑うつ様行動惹起におけるアクチン重合因子mDiaの役割
Project/Area Number |
12J03298
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
出口 雄一 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | アクチン / シナプス前終末 / シナプス小胞 / mDia |
Research Abstract |
本研究では低分子量G蛋白質Rho依存的に活性化されることによりアクチン重合を促進するmDiaを成熟神経細胞において欠損させる。この手法を用いることによって、mDia依存的なアクチン構造が神経可塑性においてどのような役割を担っているかの検討を行った。さらには神経細胞でのmDia欠損がマウス個体の行動変化に関与するかについても検討を行った。 mDia欠損がマウス個体の行動変化にどのような影響を及ぼすかを検討するために、成熟神経細胞において比較的高発現しているmDialとmDia3を欠損したコンディショナル欠損マウス(mDia-cKO)を以下の二つの異なる方法で作成した。一つはCreを発現する組換えアデノ付随ウイルスを脳定位手術法によりmDia1とmDia3の二重floxマウスの側坐核に注入した。もう一つは側坐核、海馬CA1と大脳皮質2/3層という特定の脳領域においてのみタモキシフェン誘導性のCreを発現するWfs1-CreERT2マウスとの交配を行い、その後成体に対してタモキシフェンの腹腔内投与によりCreを活性化した。側坐核の神経可塑性が重要な役割を果たし不安様行動を惹起することが報告されている社会隔離ストレスを上記の方法によって作製したmDia-cKOと野生型マウスに対して与えた。その後、不安様行動を測定するために高架式十字迷路試験を行った。その結果、野生型マウスにおいては不安様行動が強く惹起されたが、mDia-cKOにおいては不安様行動の惹起が減弱していた。この結果は不安様行動を惹起する神経メカニズムにおいてmDiaが重要な役割をしていることを示している。さらに成熟した海馬初代培養神経細胞においてmDialとmDia3を欠損させることにより、詳細な神経可塑性に対するmDiaの関与の検討を電子顕微鏡並びに免疫染色法を用いて行った。現在までのところテトロドトキシン(TTX)による神経活動の抑制時において、mDia依存的なアクチン構造がシナプス前終末でのシナプス小胞の放出を抑制的に制御していることを示唆する結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに社会隔離ストレスによる不安様行動の惹起メカニズムにおいてmDiaが重要な役割を果たしていることを発見した。さらには海馬初代培養神経細胞で神経活動抑制時においてmDia依存的なアクチン構造がシナプス小胞の放出抑制に重要であることを示唆する結果も得ている。以上の結果よりmDiaの神経可塑性における役割並びにそのマウス個体の行動変化への寄与の解明が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はmDia依存的なアクチン構造によるシナプス前終末でのシナプス小胞放出抑制機構が上記の不安様行動を惹起するメカニズムに関与しているかの検討を行いたい。さらにはシナプス小胞の放出反応と同様に他の開口分泌機構においてmDia依存的なアクチン構造が放出を抑制的に制御しうる可能性についても検討を行いたい。さらに'active stress'モデルと'passive stress'モデルである社会隔離ストレスによる不安様行動の惹起のメカニズムにおいてどのような違いがあるかを検討するために'active stress'モデルにおけるmDiaの役割を検討する。本研究ではmDia-cKOに対して'active stress'モデルであり、すでに本研究室で実験系が確立されている反復社会挫折ストレスを実施したい。
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