2013 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロスリップに着目した来談者の問題認知構造の脱構築・再構築過程の解明
Project/Area Number |
12J03313
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
末崎 裕康 総合研究大学院大学, 複合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マイクロスリップ / 言いよどみ / カウンセリング / 身振り / 問題の変化 / 例外の拡張 |
Research Abstract |
平成24年度の成果は以下のとおりである。まず問題への視点が面接内で発話と身振り表現されることを通して構造化され、それが面接者との対話の中で一度脱構築され、そしてまた面接者の対話の中で再度構造化される中で来談者の問題認知構造の変化が生起するという構造が、熟達者による面接に存在すること示唆された。また、問題解消の鍵となる例外(問題に対し、来談者自身が面接以前に行っていた対処行動等)が、面接者の技法的質問以前に来談者によって言及されており、技法的な質問によってそれが明確化され、その過程を経て問題の解消が構築されたことが、単一の事例ではあるが見出された。 平成25年度は上記の成果を受け、例外の拡張という、部分的ではあるが問題解消に重要な要素にさらに焦点化して分析を進めることとした。問題の例外は、来談者の行動でありながら来談者自身の自覚なしに遂行され、そして面接で語られるという性質を持つ。従って面接者には、来談者の語りの中から例外になりうる事象を察知し、それを「例外」とみなして対話を進めることが求められる。つまり、心理臨床面接では、その相互行為において、例外を構築する必要があるということである。このような観点から面接データを符号化し、観察したところ、面接者が質問し、来談者がその返答を行う中で例外として扱えるような事象が語られ、それに対して面接者は、1)それを例外として認識したことを表明するような返答を行い、そして2)それが例外であることを前提とした質問を行うという構造が複数のデータから見出された。 今後他の面接データでも同様の構造が観察できるか確認したうえで学会発表や論文として公にしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
データの収録および処理(符号化等)に予定以上に時間を費やしているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の活動より、例外拡張に関する面接者の技術の一部が、質問の構造として明らかとなった。この構造とは、来談者の問題認知構造を脱構築し、そして再構築する過程でもある。ここで新たな疑問として生じるのが、面接者にとって例外構築に利用可能な情報とは何かという点である。先行研究では、事象の内容が例外拡張に利用可能かどうかを判別する基準であることが指摘されている(森・黒沢、2002等)。しかし、本研究の観点である"例外の相互構築"という観点から考えたとき、内容を判断する以前に、ある事象が構築に利用できるかどうかという判断もなされているのではないだろうか。そして、その判断のカギは来談者表現のパラ言語、とりわけマイクロスリップ等の発話や身振りのよどみにあるのではないだろうか。今後この観点から分析を進め、例外構築に利用可能な情報を同定した上で、本研究課題の解決ならびに博士論文の執筆を目指す。
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