2012 Fiscal Year Annual Research Report
分岐器官の形態形成過程における細胞運動の測定と数理モデリング
Project/Area Number |
12J03338
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平島 剛志 京都大学, ウイルス研究所, 特別研究員(PD) (10620198)
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Keywords | 器官形成 / 多細胞動態 / 数理モデリング / イメージング |
Research Abstract |
平成24年度は、分岐器官の形態形成を理解する上で必要な細胞内外で働くシグナル制御と細胞集団運動の測定と数理モデリングを行った。具体的な内容は以下の通りである。 1.弱く相互作用する側方抑制制御の数理モデル解析 ショウジョウバエの気管支発生時の管の先端細胞を選別する過程においてDelta/Notchを介した側方抑制制御が重要な役割を担っていることが実験で示されていたが、側方抑制の発生における意義は具体的には示されていなかった。我々は側方抑制制御を数理モデル化し、隣接細胞間が弱く側方抑制する状況において解析を進めた結果、側方抑制がシグナル伝達系に起因するノイズの軽減に寄与することを明らかにした。この研究は、分岐器官の管の先端を決定する際の遺伝子間制御の理解につながる。 2.細胞集団運動の測定と数理モデルの構築 細胞集団が方向性を持って運動するために必須な要因を明らかにするために、培養細胞を用いた細胞運動や細胞間接着力の定量化・数理モデリングを行った。解析の結果、方向性を持った細胞集団運動を生み出すためには、細胞間で働く接着力と個々の細胞の移動強度のバランスを考慮する必要があることを明らかにした。この研究は、上皮細胞集団が走化因子に向かって運動することで分岐を形作る現象の基礎理解となるものである。 3.精管の折れ畳み形態形成 精管は発生過程において次第に折れ畳まっていく。この管の形態変化の機構を明らかにすることは、より複雑な形態変化である分岐形成解明の土台となる。現在、細胞動態を測定しつつ、取得データを参考にして数理モデル化を進めている。本研究は、採用課題の目標の一つである、細胞運動の時空間分布の測定と取得データを用いた数理モデリングによる形態形成機構の解明につながる。 申請書に記載した通り、全ての研究において申請者自身でデータを取得し数理モデリングを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究内容は、分岐器官形成の理解につながるシグナル伝達と細胞運動に関するもので、それらの結果は取りまとめられ、国際学術誌に3報の論文を発表しました。またドイツや台湾で開かれた国際会議に参加し研究発表しました。論文発表された研究内容は、採用課題を推し進めるために必要な内容ではありますが、申請書に書かれている初年度の計画とは多少異なる点がありました。その点を反省材料に踏まえ、進展度の評価を(2)にしました。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の中心テーマは、器官の形態形成過程における細胞動態の定量化と数理モデリングである。細胞動態の定量化をすすめる道具として、(1)細胞膜を蛍光可視化できるトランスジェニックマウス、(2)ステージトップインキュベーター付き共焦点顕微鏡、(3)S/N比の低い画像から細胞膜をトレースする画像処理技術を揃えている。また、形態変化を記述する数理モデリングも準備が進んでいる。 平成25年度には細胞動態データを大量に取得し、それに基づく数理モデルの構築を完結させ、最終年度に行うデータとモデルの融合の土台をつくる。
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Research Products
(9 results)