2012 Fiscal Year Annual Research Report
鉄触媒によるアルコールからの脱水素過程による水素生成反応の開発
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12J03390
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
神谷 昌宏 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 鉄触媒 / 水素 / アルコール |
Research Abstract |
本研究の目的は新エネルギー源として注目を集めている水素分子をアルコールから発生させる触媒の開発を目的としている。特に、低価格で枯渇の懸念がなく、安定供給が可能な鉄を中心金属とする触媒の開発に取り組む。研究の最終目標としては、メタノールやエタノールなど、バイオマス資源の発酵により生成可能なバイオアルコール類からの水素発生反応の構築を目的している。 本年度は目的とするアルコールの脱水素反応に対して触媒活性を示す錯体を合成するために、DFT計算を元にした配位子の設計およびそれら配位子を有する触媒前駆体の合成を行い、その結果をあしがかりとして触媒の開発を行った。種々鉄触媒の探索を行った結果、1~0.001mol%のシクロペンタジエニルビスカルボニルクロロ鉄錯体(CpFe(CO)2Cl)と水素化ナトリウムを触媒として用い、トルエン中での反応を行うことで目的とするアルコールからの水素生成反応が進行することを見出した。この反応は2-ピコリルアルコール類のみ選択的に進行し、水素と対応するケトン/アルデヒドを与える。また、ピコリルアルコキシドを配位子とする中間体の単離やそれに基づく触媒機構の解明にも成功しており、これらの知見をもとに前駆触媒を改良することで取り扱いの困難な水素化ナトリウムを用いないより簡便な反応系の開発にも成功している。本触媒系は初の卑金属触媒によるアルコールからの水素発生反応であり、また、非常に高い活性触媒回転数(TON)67000を実現している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった触媒の探索および反応の最適化はすでに完了しており、非常に高活性かつ簡便に取り扱うことのできる非金属(鉄)をベースとする触媒の開発に成功しており、既に次年度の目標である基質適応範囲の拡張について取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した触媒反応には2つの課題が残っている。1つは基質の適応範囲が2・ピコリルアルコール類に限られている点である。もう一つは反応温度がトルエン中還流(約110度)と比較的高温を要する点である。これら二つは最終目標であるエタノール(沸点78度)、メタノール(沸点65度)などのバイオアルコール類からの水素発生反応を行う上で解決が必須の課題である。今後はより高活性な触媒を開発することで基質適応範囲の拡張およびより低温下での反応の進行を目指す。
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Research Products
(5 results)