2012 Fiscal Year Annual Research Report
災害等による局所的な機能停止にロバストな高信頼型無線ネットワーク技術に関する研究
Project/Area Number |
12J03414
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
劉 家佳 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | MANET / ルーティングプロトコル / 2ホップリレー / 消失訂正符号 / 配送確率 / 通信容量 / マルコフ連鎖 |
Research Abstract |
スマートフォンやタブレット端末の普及している現在、無線通信ネットワークの抜本的な機能強化が必要であり、特に地震や津波など大規模災害時において高い通信性能を保証可能な無線通信ネットワークの開発が重要である。実際に地震や津波が発生した時のネットワーク障害の経験的な情報を調査した結果、大規模災害時に無線通信インフラを用いた通信は困難であることが分かったため、本研究では、無線通信インフラを必要せず無線端末同士でマルチホップ通信するMANET(Mobile Ad-hoc Network)について検討することで、大規模災害時でも高い品質で通信可能な無線通信ネットワークの実現を目指す。無線端末の高性能化やアプリケーションの登場などから近年脚光を浴びているMANETであるが、ネットワーク構造と通信路の時間的変化が激しく理論構築が難解な故に、シャノン限界に相当するような最大通信容量を与える理論モデルが未だ与えられておらず、また、災害時通信において重要視される配送確率も同様にモデル化されておらず、実用に向けた研究開発において大きな課題になっている。これに対し本研究では、2ホップリレーと呼ばれる通信容量・配送確率を与える理論モデルの構築に成功した。また、災害時はデータの配送確率を向上させることが極めて重要であると考えられるため、消失訂正符号を用いてデータの冗長性を付与した2ホップリレーを開発し、データの冗長性とMANETの配送確率の関係をモデル化すると共に、MANETの配送確率を大きく向上させることに成功した。本研究の成果は、災害時の無線通信ネットワークにおける通信品質保証の実現に寄与するものとして大いに期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、本年度は大規模ネットワーク障害の確率的モデルを用いてネットワークの耐障害性を評価する理論モデルを構築し、次年度においてそのモデルを用いて高信頼型無線ネットワーク技術を考案するとあった。しかしながら、本研究において災害時に高い通信品質を保証する無線ネットワーク技術と理論モデルの構築に成功したため、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度構築した通信容量と配送確率の理論モデルを基にし、2ホップリレーを効率的に行うアルゴリズムを構築することにより、通信品質の向上を図る。また、震災時の通信において特に注意すべきことは通信端末の電力に関することだと考えられるため、電力利用効率を考慮し高い通信品質を保証する無線ネットワーク技術の実現に向けてさらに検討を重ねる。
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Research Products
(2 results)