2012 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀フランスにおける犯罪者表象の研究-3)19世紀後半の犯罪者表象について-
Project/Area Number |
12J03428
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
梅澤 礼 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 監獄 / 文学 / 歴史 / 犯罪学 / フランス / 近代 / 科学 / 学際研究 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀後半のさまざまな資料に見られる犯罪者表象の変化を追った学際研究である。初年度は、前半は日本での文学博士論文の執筆に、後半はフランスでの調査に充てられる予定だったが、受入研究者との協議の結果、今後の活躍の場を開拓するために、初年度は日本での研究成果の発表に充てられることとなった。 そこで、5月にはユゴーと監獄論争に関する論文を日本フランス語フランス文学会の紀要に送り、掲載されることとなった。6月には文学とその周縁をめぐるワークショップに出席し発言した。また、受入研究者とともに、歴史家アラン・コルバンの最新作を翻訳した。7月には『世界史論叢』に、囚人と文学に関する論文を投稿した。また、近代科学の問題点について考える研究会に参加し、監獄学という視点から発表を行なった。この成果は、平成25年秋に、共著として出版される。8月にはフランスで、文学と隠語に関する文献を閲覧した。そしてその結果をもとに、10月には日本フランス語フランス文学会において口頭発表を行なった。11月には、科研費補助金プロジェクト「パリという首都風景の誕生」に参加し、監獄改革と19世紀後半の首都改造について発表した。この成果は平成26年春に共著として出版される。12月には南山大学の研究会「19-20世紀のヨーロッパにおける科学と文学の関係」において、犯罪学と文学について発表した。これは平成27年に共著の形で出版される。1月にはドミニク・カリファの19世紀新聞史に関する小論文を翻訳し、『日仏文化』に掲載された。2月にはふたたびフランスで調査するかたわら、ジュネーブでのベッカリーア国際シンポジウムに参加し、国内外の研究者と意見交換した。 以上のように、予定よりも多くの場で発表を行ない、活躍の場を得、評価されることとなった。こうした国内での研究成果のほか、カリファの最新作『下層』において申請者の研究が評価・引用されたことも加えておく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画においては、初年度のうちに文学の博士論文を提出する予定だったが、さまざまな場所で発表の機会を得る中で、まだ明らかにしなければならない点がいくつかあることに気づいた。結果として論文執筆はやや遅れることにはなっているが、そのぶんいざ執筆となれば、短期間に、かなり密度の濃いものが書けると自負している。フランスでの調査に関しては、4か月かかる予定だったものを2か月で終わらせ、研究結果を次々に発表している。全体的に見て、研究はおおむね順調に進展していると言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定によれば、平成25年度は、19世紀後半の囚人による文学作品の研究と、ユゴーの作品分析に充てられることになっている。だが、平成24年度に行なった調査の結果、それ以前の、19世紀中期に、犯罪と狂気をめぐる大きな論争がいくつかあったこと、そしてそうした議論がいくつかの文学作品の中に反映されていたことなどがわかった。よって、平成25年度は、これらについて、おもに日本で研究し、その都度成果を発表してゆく。また、当初の予定では、フランスに4か月滞在して調査することになっていたが、これを2か月に縮め、研究のスピードアップをはかる。そのほか、平成24年度は日本で多くの発表を行なったが、平成25年度は、日本だけでなく、国外の紀要などでも積極的に研究成果を発表してゆく予定である。
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Research Products
(6 results)