2013 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀フランスにおける犯罪者表象の研究-3)19世紀後半の犯罪者表象について-
Project/Area Number |
12J03428
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
梅澤 礼 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | フランス / 19世紀 / 犯罪 / 監獄 / 歴史 / 文学 / 社会 / 科学 |
Research Abstract |
本研究は、1848年以降のフランスにおける犯罪者表象の変化を、学者や議員らによるものと作家たちによるものに分けて比較することで、19世紀後半の犯罪者処遇の歴史、犯罪に関する諸知の発展のようすをまず理解し、その上で作家たちの犯罪者表象の特徴と社会的意義を知ることを目的としている。 平成25年度は、当初の予定どおり、19世紀の社会と文学に大きな影響を与えた犯罪者ラスネールの『回想録』(1836)の翻訳を行ない、年度内に出版社に訳稿を提出した。また、同じく当初の予定どおり、監獄における狂気を描いたゴンクールの『娼婦エリザ』(1877)に関し、日本フランス語フランス文学会秋季大会(於別府大学)において口頭発表を行なった。さらに、南山大学地域研究センターと東京大学ドイツ語研究室との主催によるシンポジウム「科学知の詩学」(於東京大学駒場キャンパス)において、監獄学と文学に関する口頭研究発表を行なった。 そのほか、当初の予定にはなかったこととして、パリ第1大学19世紀史研究センターのセミナーで、作家ユゴーと監獄問題に関するフランス語での口頭発表を行なった。また、19世紀中期の文学と隠語についての論文が上智大学フランス文学研究室紀要に掲載されたほか、前述の犯罪者ラスネールに関するフランス語論文が慶應義塾大学日吉紀要に掲載された。さらに共著として、近代の科学について論じた『近代の超克』(2013)が出版されたほか、19世紀後半のパリ改造を多角的に論じた『パリという首都風景の誕生』も年度内に出版社に念校を提出した。また、共訳としてアラン・コルバン『英雄はいかに作られてきたか』(2014)も出版された。 このように平成25年度の研究成果は、近代フランスの知られざる側面、そして本研究の意義を、フランスのみならずヨーロッパの文学、歴史の研究家、さらには一般聴衆、一般読者にまで広めることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究発表に関しては、単独での発表のほか、さまざまなシンポジウムや共著に参加することとなり、当初の計画を上回って進展している。しかし単著の計画に関しては、こうした発表に時間を取られるあまり、執筆はやや遅れ気味である。よって自己評価は②おおむね順調に進展している、とする。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度は、これまでの研究の成果を1冊の単著(仮題『監獄論――19世紀フランスの監獄、社会、文学――』)としてまとめ、出版する予定である。 また、フランスの関係者から、本研究の成果の一部をフランスの文学、歴史、犯罪学に関する紀要に投稿することを勧められているため、その執筆も進めてゆく。 さらに国内においては、いままでのように既存の研究会に参加するのではなく、自ら研究会を開こうと考えている。その第一歩として、日本フランス語フランス文学会秋季大会において、受入教官の協力をあおぎながらワークショップを企画する予定である。
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Research Products
(7 results)