2013 Fiscal Year Annual Research Report
LHC実験におけるレプトン分布を用いた親粒子諸性質の解明
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12J03439
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川端 さやか 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | LHC実験 / 標準模型 / トップクォーク / 質量 / 質量測定 |
Research Abstract |
トップクォークの質量は素粒子標準模型における基本的パラメタであると同時に、標準模型や新しい物理を予言する模型を検証する上で決定的な役割を担う。しかし、現在までの実験で1GeV以下の精度で測定されているトップクォーク質量は、ハドロン化のモデルに依存した量であり、厳密にはトップクォークのpole質量とは異なる。理論的に定義のはっきりした質量の測定も行われているが、その測定誤差は数GeVとまだ大きい。 そこで我々はLHC実験においてトップクォークの(理論的定義の明確な)質量を高精度で決定することを目的として、新しいトップクォーク質量測定法を提案した。この方法は我々が前年度考案した「重み関数法」を応用したものであり、トップクォークの崩壊によって放出されるレプトンのエネルギー分布のみを用いる。そのため理想的にはハドロン化による不定性の影響を受けないという利点がある。この方法を用いたLHC実験におけるトップクォークの質量測定のシミュレーション解析をtreelevelで行った。本解析ではトップクォーク対生成イベントがlepton+jetsに崩壊する過程を用いた。レプトンに関するイベントセレクションカットはレプトン分布を大きく変形してしまう問題があるが、レプトンカットで落ちるイベントをモンテカルロ・シミュレーションのイベントで補うことで解決することができた。その他のカットやバックグラウンドの影響等も含めてこの方法による質量決定の不定性を評価した結果、陽子衝突重心エネルギー14TeV、積分ルミノシティ100fb^<-1>において約1.5GeVの精度が得られた。支配的な不定性はfactorizationスケール依存性に関するもので、高次の輻射補正を含めることで小さくできる。したがってこの方法によって1.5GeV以下の高精度が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トップクォーク質量をLHC実験において高精度で決定するには、さまざまな実験的問題があるが、これらをおおむね解決して有用な質量測定法を考案することができた点で順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までのトップクォーク質量測定法の解析はtree levelであったが、今後、高次輻射補正も含めたシミュレーション解析を行う。これには解析に用いる重み関数を高次補正まで含めて計算する必要がある。トップクォークの生成・崩壊両方について高次補正を含むモンテカルロ・シミュレーターの開発も必要とされる。またトップクォークの崩壊幅の影響に対する補正も考慮する。これらの補正を順次含めることで、質量決定精度が向上するとともに摂動論において定義の明確な質量が得られる方法であることを砲かめられると期待する。
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Research Products
(3 results)