2012 Fiscal Year Annual Research Report
環境計測用としての高性能固体電気化学式ガスセンサの開発
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12J03445
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 伴光 九州大学, 産学連携センター, 特別研究員(DC2)
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Keywords | YSZ / 環境モニタリング / VOC / NiO / シミュレーション |
Research Abstract |
本研究は、高度な環境計測用ガスセンサの構築を最終目標とし、酸化物系薄膜材料の探索と材料の微細構造の制御、およびその電気化学特性の評価・検討を行うものである。今年度は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)とNiO検知極を組み合わせた固体電解質型ガスセンサについて、VOC選択性の改善を目指した検知極構造の制御と、コンピューターシミュレーションによる詳細なVOC検知メカニズムの解明を行い、以下のような結果を得た。 まず、NiO検知極素子のVOCの検出における、エタノールによる妨害の低減を行った。NiO検知極層上へ、エタノールを選択的に分解できることを見出したSnO_2を触媒層として形成し、さらに、エタノールの分解効率を向上させるため、アルミナ微粒子で構成される緻密な構造のガス拡散阻害膜をSnO_2/NiO検知極の両端に形成した。これにより、VOC(トルエン)に対する感度をほとんど低下させずに、エタノール感度を無視できるレベルまで低減させることに成功した。本センサは、トルエンだけでなく、同じ芳香族系のm-キシレンにも大きな感度を示したが、アルデヒド系のホルムアルデヒドに対してはほとんど感度を示さなかった。これは、SnO_2がトルエンやm-キシレンよりもホルムアルデヒドに対して高い触媒活性を有するためだと、SnO_2の触媒活性の評価によって明らかにした。 次に、NiO検知極素子の詳細なVOC検知メカニズムを解明するために、NiO検知極層における気相触媒反応についてシミュレーションによる解析を行った。その結果、検知極層を通過する際に一部のトルエンが分解されることで、NiO/YSZ界面におけるO_2濃度は減少し、CO_2およびH_2O濃度は増加することが明らかになった。また、この結果を用いて、NiO/YSZ界面におけるトルエンのアノーディク反応について詳細な解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、YSZとNiO検知極を組み合わせたセンサについて、実際の室内大気環境中でのVOCのモニタリングを目指し、室内大気特有の妨害ガスであるエタノールによるVOC検出への干渉の低減を行った。また、NiO検知極素子について、検知極層での気相触媒反応についてシミュレーションを行うとともに、NiO/YSZ界面でのVOCの電気化学反応について解析を行ったが、いずれも当初の研究計画通りほぼ順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、Nio検知極素子へSnO_2触媒層およびナノアルミナガス拡散阻害膜を付加することで、室内大気中における妨害ガスであるエタノールによる影響をほとんど無視できるレベルまで低減した。そこで今後は、本素子を用いて、実際の室内大気中におけるVOC濃度の測定を行う。また、このような触媒層の付加による気相反応の制御に加えて、検知極/YSZ界面の構造も詳細に制御することで、電気化学反応活性を最適化し、大気環現モニタリング用あるいは自動車排ガス監視用の高性能ガスセンサの構築を目指す。また、今年度に得られた、NiO検知極素子のVOC検知メカニズムに関するシミュレーション結果の妥当性について、実験的な検討を行う。
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Research Products
(9 results)