Research Abstract |
分子動力学(Molecular Dynamics : hm)法に基づき,散逸粒子動力学(Dissipative Particle Dynamics : DPD)法における相互作用モデルをボトムアップ方式で構築する手法を検討した.具体的には,MDシミュレーションにおいて,複数のLennard-Jones(LJ)粒子で構成されるクラスタ間に作用する力をサンプリングし,DPDにおける保存力,散逸力,ランダム力(時間相関のない揺動力)のモデリングを行った.モデリングした3つの力を用いてDPDシミュレーションを行い,静的特性(平衡温度,動径分布関数,表面張力)及び動的特性(速度相関関数,拡散係数)をMDの計算値と比較した.その結果,液体のような密度の高い系では,DPDではMD系をうまく再現できないことが分かった.具体的には,DPDにおける平衡温度及び拡散係数は,MDにおける値よりもかなり小さくなってしまうことを確認した.DPD法は,散逸粒子の運動の特性時間は揺動力の相関時間よりも十分長く,散逸粒子の運動は過去の履歴に依存しないという仮定(Markov近似)に基づいているが,液体系では必ずしもこの仮定は成立しない.その結果,ゆらぎと散逸のバランス(揺動散逸定理)が適切にとられておらず,DPDとMI)の結果に乖離が生じるものと考えられる.上記の問題点を解決するために,新しいシミュレーション方法として,non-Markovian DPD(NMDPD)法を提案した.NMDPDでは,時間相関を持った揺動力が用いられ,散逸粒子の運動は過去の運動履歴に依存する形式となっている.NhmPDの運動方程式を一般化Langevin方程式に基づいて定式化し,運動方程式に含まれる平均力,摩擦力,揺動力をMD計算からモデリングする手法を構築した.上述のLJ系に本手法を適用し,静的・動的特性を比較した結果,NMDPDはMDにおける平衡温度,動径分布関数,拡散係数を精度よく再現できることが分かった.NMI)PDはDPDの拡張版と位置付けることができ,Markov近似が妥当ではない系における物質輸送を解析する手法として非常に有用であるといえる.
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