2012 Fiscal Year Annual Research Report
紀元後一世紀のラテン散文と修辞学-大セネカの修辞学書への注釈書作成
Project/Area Number |
12J03459
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
吉田 俊一郎 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 西洋古典学 / ラテン語 / ラテン文学 / 修辞学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、帝政初期の模擬弁論における、黄金ラテン散文の表現の継承と修辞学理論の利用のあり方とを大セネカの著作に即して究明することであり、そのために本研究では大セネカの『論判弁論集』の第一巻に対する注釈書を作成する。この注釈書作成によって考究される主要な点は、大セネカ『論判弁論集』第一巻の本文校訂、大セネカおよび彼に引用されている模擬弁論家の文体への、黄金期ラテン散文の影響、大セネカの序と論評に対する修辞学理論の影響の三つであるが、本年度ではこのうち全体の基礎となる本文校訂の問題を主要な課題とした。これには、写本の異読の比較に基づく伝承の系図の確立、異読やその他の問題箇所に対する近代以降の文献学者たちの修正提案の検討、その他の箇所で自分で問題を発見した場合の修正提案が含まれる。これらの問題についてこの滞在期間中に、同地のバイエルン州立図書館において日本にない二次文献の収集と調査を行った。またラテン語辞書Thesaurus linguae Latinae編纂所の図書館にある資料を利用してラテン語の各語の語法についても研究した。後者においては、同編纂所に所属する諸外国の研究者と本研究についての議論も行った。この期間中に、本文校訂の下準備として、現行の校訂版をもとに『論判弁論集』第一巻の本文の精査が行われ、異読や内容について問題となりそうな箇所が明らかとなった。これらの成果は、新たな注釈書の基礎となる本文の確立に寄与し、大セネカおよび紀元後-世紀初頭の修辞学のより適切な理解につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外滞在を通じて日本にない二次文献を収集し、注釈書の基礎となる本文校訂のさいの問題点を把握するという目的がほぼ達成できたと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまで把握された問題の究明のため、本年度得られた資料をもとに、個々の問題点を議論し解明する注釈の執筆に取り組む。
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Research Products
(2 results)