2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J03465
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水野 陽一 広島大学, 大学院・社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 被害者 / 刑事訴訟 / 法的地位 / 被害者弁護 / 無罪推定原則 / 被害者保護 / 刑事訴訟の目的 / 弁護人依頼権 |
Research Abstract |
わが国において、2008年12月以降特定の事件について被害者参加制度の運用が開始され、犯罪被害者に対して訴訟参加者としての地位が認められることになった。被害者が自らに認められる法的地位について的確に把握し、認められる権利を有効に行使するためには、何らかの法的援助が必要となるのであって、被害者弁護を担う弁護人の存在が求められる。以上について、ドイツにおける議論を素材として、我が国の刑事訴訟における被害者弁護について考察した。結果として、公判外においても被害者弁護が必要となる場合が認められ、被害者弁護は包括的に行われるべきであること、被害者参加人以外にも被害者弁護が認められるべき場面があり、被害者参加を行わない被害者に対しても無償の弁護人依頼権が認められるべきであることが明らかになった。被害者保護の重要性について疑いはないが、一方で無罪推定原則が妥当するはずの刑事訴訟において、なぜ「被害者」という存在が観念されうるのか、といった問題もつとに提起されている。被害者保護の重要性を十分に認識しつつ、その実践に関して、刑事訴訟の目的が何であるのかという問題との関連においても十分に議論がされなければならない。被害者保護は、刑事訴訟における重要な課題であり、今後もより一層の制度的充実が求められる。しかしながら、公判における被害者参加が、被告人の防御権に対して大きな影響を与えうるのだということを考慮に入れた上で、我々は刑事訴訟における被害者保護の充実を図ると同時に、それによって被告人の防御権が侵害されないように十分な配慮を図る必要がある。刑事訴訟における被害者の法的地位は、裁判の終結まで推定的なものとされなければならず、彼らが一訴訟参加者として基礎付けられるためには一定の条件が課されなければならない。以上の成果を基礎として、来年度以降刑事訴訟における被害者の法的地位についての研究を深化させていく所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来から行なってきたドイツ法を中心とした大陸法的視点からの研究が順調に進行しており、ここから多くの示唆を得ることができている。更に、被害者の法的地位について対比的考察をするために行なっている、被疑者・被告人の防御権保障に関する研究についても成果を得ることができていることから、本研究は1頂調に進行しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の遂行に関して、これまでは主にドイツ法との比較研究を通じてこれを行なってきたものであるが、来年度はこれに加えて英米法研究の視点からも研究を進展させて行くことを予定している。我が国の刑事訴訟は、当事者主義的側面と、旧法に由来する職権主義的側面を併せもつものであるといえることから、従来の大陸法的視点に加え、英米法的視点からも研究を行うことが叶えば、本研究は一層充実したものになることが予想される。英米法、特にアメリカ法研究遂行のため、本年度において、アメリカ合衆国・サンフランシスコ大学ロースクールにおいて、客員研究員として研究することを予定している。
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Research Products
(3 results)