2013 Fiscal Year Annual Research Report
脳損傷後のリハビリテーションによる皮質脊髄回路網形成を促進させるメカニズムの解明
Project/Area Number |
12J03540
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 浩 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中枢神経損傷 / 皮質脊髄路 / 神経可塑性 / リハビリテーション |
Research Abstract |
これまでげっ歯類を用いて中枢神経損傷後の運動機能回復機序として, 皮質脊髄路が新たな神経回路網を形成することで運動機能を代償することを明らかにしてきた。しかし, げっ歯類とヒトを含めた霊長類とでは皮質脊髄路の構造が異なることが知られている。ヒトやサル(マカク)では皮質脊髄路の一部が直接脊髄の運動ニューロンに結合することで細かい指の動きを可能としているのに対し, げっ歯類ではそのような直接回路は存在しない。そのため, げっ歯類を用いた神経回路研究では, その後の霊長類を用いた研究が重要であると考えられる。 そこで, サル脊髄損傷を用い以下に着目して研究を行った。1. 脊髄損傷により完全に皮質脊髄路が切断された後でも, 自然経過に伴い運動機能の回復はみられるのか。2. 一度切断された皮質脊髄路は, 自然経過に伴い神経可塑性変化はみられるのか。 1. については, 脊髄損傷直後より約3ヶ月間継続して行動学的解析を行った。その結果, 損傷直後には著しく低下した運動機能は, 自然経過とともに徐々に回復がみられた。詳細な解析を行った結果では, 粗大な動きは比較良好な回復を示したが, 指の巧緻性などの機能障害は顕著に残存した。このことは, 指の巧緻動作には皮質脊髄路が重要な役割を担っていることを意味している。2. 神経可塑性変化の解析では, 脊髄損傷後10日目と150日目の皮質脊髄回路網を可視化して比較した。その結果, 損傷後10日目では, 損傷部以下での皮質脊髄路はほとんど観察されなかったが, 150日目ではその数が増加しており, その一部は直接運動ニューロンに結合していることが明らかとなった。このことは, 一度切断された皮質脊髄路が自然経過とともにその軸索枝を伸長・分岐させ新たな神経回路網を形成することで一部の機能回復をもたらしていることを意味している。 これらの結果より, 成熟したサル中枢神経においても, 代償性に神経回路網形成が起こり, 運動機能回復に寄与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初, 計画していたげっ歯類モデルを用いた代償性神経回路網形成については, 論文公表を行うことができた。そのため, 対象をげっ歯類から霊長類へ変更して研究を継続した。その結果, ヒトと類似した神経回路構造をもつ霊長類で新たな知見を得ることができ, その内容を学会で報告することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究当初は, げっ歯類を用いて脳損傷後におこる代償性神経回路網形成のメカニズム, 特にリハビリテーション作用に着目して研究を行った。その結果, 脳損傷後のリハビリテーションが代償性神経回路網形成に及ぼす影響について明らかにすることができた。その後は霊長類を用いて, 脊髄損傷後の皮質脊髄回路網形成について検討した。しかし, リハビリテーション作用による機能回復および代償性神経回路網形成についてまでは明らかにすることができていない。今後は, これらの関係性について検討を行っていきたい。
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Research Products
(2 results)