Research Abstract |
報告者は,ロボットフィンガにヒトの触覚受容器を模倣したセンサ素子が分布した柔軟な皮膚を取り付け,実際にタスクをおこないながら安定な把持を学習する手法をこれまで研究してきた.前年度は,ニューラルネットワークの構造を含むこの学習のアルゴリズムを整理し,また,センサ情報を得るシステムの構成をよりロバストになるように見直した.加えて,追実験をおこなうことでこの手法の検証をおこない,この手法が安定的に用いることが可能であることを確かめた,そのうえで,この手法および一連の実験を学術誌へと投稿し,その内容が妥当であると評価され受理された. さらに前年度は,ヒトの筋腱構造を規範としたロボットハンドの設計にも取り組んだ.報告者らは,ヒトの手の筋腱構造の中でも,虫様筋という固有感覚のフィードバックにおいて重要な役割を担っていることが知られている筋に注目している.この筋の機能は,未知な部分が多く,ロボット工学の視点から研究をおこなうことで,これまでにないロボットハンドシステムの提案,ヒトの手の機能解明の双方への貢献が期待される.これまでに様々なヒトを規範としたロボットハンドは開発されているものの虫様筋をはじめとする筋の複雑な構造は,ロボット工学的な解析や,それをもとにした設計の妨げとなっていた.そこで,報告者らはヒトの筋腱構造をその機能を保ったまま,一般的な腱駆動機構のうえに実現することを目指し,機構の設計,開発をおこなった.解剖学的な知見をもとにし,筋の起始部分の等価変換やヒトと同等の非線形プーリ機構の提案などを通して,解剖学的に精確なロボットハンドの指を開発した.これらのロボットの設計における,ヒトの筋腱構造からロボット工学で一般的な腱駆動機構への変換の手法,およびその妥当性の検証に関して,国内外の学会にて発表をおこなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトのように適応的で巧みなマニピュレーションの実現を目指すなかで,複数の感覚が相互作用し,互いに学習を促進し合うことで,自律的にセンシングモデルや運動を獲得する手法を提案.また,解剖学,生理学的な知見をもとにロボットを設計し,手の持つ構造がセンシングにもたらす利点を解明に向け大きな進展があったため.
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトの筋腱構造を規範としたロボットハンドの設計において,従来の腱駆動ロボットハンドと異なる機構を取り入れたが,これらの構造によって生じる運動を解析,実機を用いた検証をおこなうことで、ヒトの持つ筋腱構造をロボットに取り入れることの,ロボット工学への利点を解明する.また,設計したロボットに人工皮膚とセンサを取り付け,これまでにおこなってきた複数種類のセンサの学習と統合することで,センシングと身体構造が協調した巧みな運動の実現を目指す.
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