Research Abstract |
主として, ヒトの筋腱構造を忠実に再現したロボットハンドの設計, 開発及び, その制御に取り組んだ. 一般的なロボットハンドの多くに, 複数の関節を腱を通して制御する腱駆動機構が用いられている. ヒトの手, 特にその指はこれと同じく腱駆動機構として捉えることができ, これを参考にすることで, これまでにない腱駆動機構の有効性を示し, 巧みなマニピュレーションの実現が期待できる. そこで, 報告者らはヒトの指における筋健構造の生体工学での知見を基に, これを忠実に再現した腱駆動ロボットフィンガを開発した. このロボットフィンガの持つ, ヒトの筋骨格系との共通な特徴の代表的なものとして, 各筋(ロボットにおけるアクチュエータ)と各関節間のモーメントアーム, また, このモーメントアームの非線形変化, 腱の途中での分岐が挙げられる. このロボットを動かす際には, これらの特徴を踏まえて, 一般的な腱駆動機構と同様な制御を用いることが考えられるが, この中で, 分岐した腱に関しては従来の腱駆動機構として扱うことの出来ない. そこで報告者は, この分岐した腱がその幾何的拘束により, ロボットフィンガの複数の関節を連動させて動かすことに着目し, 関節の仮想自由度の概念を提案した. 加えて, この仮想自由度によって自由度が減少した系における運動学を導出し, また, この連動状態を維持するための条件を求めた. これらの結果を用いて, 開発したロボットフィンガを簡単な位置制御で制御し, 軌道を制御できることを示した. また, ここで提案した分岐腱の作用による自由度の減少は, ヒト規範の複雑なロボットフィンガだけでなく, より一般的でシンプルなマニピュレータにも用いることができ, これに関しても, シンプルな2自由度マニピュレータを開発することで, この有用性を示す実験も並行しておこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来の計画では, 多指間の協調作業を扱う予定であったが, ヒトの筋腱構造を規範としたロボットハンドの開発自体に新たな発見があったため, 本年度はこれに注力した. そこで成果を得ることができたという意味で, おおむね順調に研究が進んでいるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトの持つ機構にマニピュレーションを容易にする可能性をここまでの研究で見いだしたため, 今後はこの事実にも注目しながら研究を進める予定である, つまり, 指の筋腱のもつ機能をうまく利用し, マニピュレーションの系を拘束しながら, 種々のセンシングを組み合わせることで, 多指でのマニピュレーションタスクを実現する。
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