2012 Fiscal Year Annual Research Report
転写メディエーターによる造血幹細胞と白血病細胞のニッチ制御機構
Project/Area Number |
12J03621
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石野 瑠璃 神戸大学, 大学院・保健学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 基本的転写因子メディエーター / MED1 / 造血幹/前駆細胞 / FGF7 / 間葉系幹細胞 / マウス臍帯 |
Research Abstract |
私たちはこれまでにマウス線維芽細胞MEFには造血幹細胞支持能が存在するが、Med1^<-/->MEFの造血幹細胞支持能が野生型MEFに比べて低下することを報告している(Sumitomo, Ishino, et al. Mol Cell Biol 30, 4818-4827, 2010)。マイクロアレイにより、野生型MEFに比べて発現が低下する分子として、線維芽細胞増殖因子(FGF)7が検出された。FGF7はmRNAレベルと蛋白レベルにおいてMed1^<-/->MEFで野生型に比べ著しい発現低下がみられた。私達が持つ造血ニッチモデルを用いてFGF7の存在下では骨髄細胞の増殖と造血幹/前駆細胞の支持が行われていることがわかった。しかし、FGF7の受容体であるFGFR2IIIbの発現分布を調べたところ、骨髄間質細胞に発現を認めたが、骨髄造血細胞(血球)では全く発現していなかったため、MEFや骨髄間質細胞が産生したFGF7は直接骨髄細胞に作用しているのではなく、オートクライン機構によりMEFや骨髄間質細胞自身に作用している可能性が考えられる。この刺激によりニッチ側の細胞がなにか別のニッチシグナルを分泌しているのではないだろうかという仮説をもとに今後さらに検討を続ける予定である。 一方、間葉系幹細胞は様々な組織に存在するが、それらは組織特異性があって同一ではない。臍帯に存在する間葉系幹細胞は分化度が最も低く、ES細胞に近い性質を持つことが指摘されている。これまでにマウス臍帯由来のものを単離した例がないが、この培養法が確立できれば多くの実験に応用でき、間葉系幹細胞や造血における新しいメカニズム解明への第一歩となりうる。そこで、その培養法を確立するため諸条件の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい造血ニッチ分子候補としてFGF7を同定できたことは、造血の仕組の一端を解明する重要な前進であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き造血幹細胞支持能におけるFGF7の役割とその機序を詰め、まとめあげる予定である。並行して、オステオポンチン(OPN)プロモーターにおけるVDR、Runx2の協調的転写活性化のメカニズムを明らかにし、造血微小環境におけるOPN転写の関係性をみていく。 また、マウス臍帯由来間葉系幹細胞の培養法確立においては、様々な条件下における増殖率や骨、脂肪への分化能を比較し、未分化な状態で分離培養できる最適な条件を検討していく。
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Research Products
(3 results)