2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J03701
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
尾崎 裕介 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自然電位 / インバージョン / 水頭変化 / 透水構造 / 随伴方程式 / 不飽和層 |
Research Abstract |
自然電位分布から水頭分布を推定するインバージョンを開発した。本手法は、自然電位分布の変化と地中での水頭変化に関連性があることを用いている。類似する手法として、自然電位分布から地下水面の形状を推定する手法が提案・実用化されているが、深度方向での水頭変化が推定出来ない。地表面での自然電位分布から空間的な水頭変化が推定出来るよう開発・改良を行った。その手法を改良し自然電位分布から透水構造を推定する手法も開発した。水頭変化と数点での地下水の流入出量が既知である場合には、透水係数が推定できる。透水係数の値を推定する手法は以前から様々な提案があるが、いずれも経験的な法則にすぎない。他方、自然電位は地下水の流動そのものに直接感度があるため、自然電位分布を理論に従い解析することで、既存の経験的手法よりも精確に透水構造が推定されることが期待できる。数値計算による擬似データに対して開発した手法を適用し、水平方向に卓越した高透水性の不均質構造や鉛直方向に卓越した低透水性の不均質構造が推定出来ることを明らかにした。また、開発した解析手法の拡張も行った。自然電位は、地下水流動に直接感度があるというメリットがある反面、パラメータが多いことや、地下水面から地表面の間に存在する不飽和層の厚さにも影響される等、発生要因が複数存在するデメリットがある。これらの影響を精確に評価し解析に反映させるためには、複雑な計算プロセスが必要となる。この問題に対処するために、パラメータ間の関係式を解析手法に組み込みこむ工夫を行った。また、不飽和層に関する問題では、逆解析に必要な感度分布を求める際に随伴方程式法を用いることで、従来手法ならば計算が複雑で困難であった不飽和層の影響を考慮した解析手法を開発した。不飽和層を考慮した自然電位の逆解析手法は未だ論文等で発表されておらず、この手法は先進的なものであると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、主に手法の開発に専念して作業を行なってきた。当初の予定であった、基礎的な手法の開発は秋季頃までには無事に終了し、実データへの適用に向けた改良も行うことが出来た。特に不飽和層の影響の評価に関して、当初の計画では何らかの手法でこの影響を自然電位データから除去しその後逆解析を行う予定であったが、この影響の精確な評価を行う手法開発では多くの困難が予想される部分であり本手法の実用化へ向けた最大の障害になることが予想されていた。しかし、この部分も考慮した解析が可能になり昨年度終了時点で本手法の実用化への目処が立ったということで、計画以上に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の進捗により、実データ解析を行う上で事前に予測される問題は、ある程度解決出来たものであると考えている。従って、今年度以降は実際のデータ解析にとりかかる予定である。井戸の注水試験に伴う自然電位分布のモニタリングデータを用いて井戸周辺の透水構造を推定する予定である。これは、モニタリングデータを使用することで特に懸念されるノイズの影響を軽減することができるからである。事前に予測出来なかった問題に関しては、実データ解析を行いながら適宜解決していく予定である。実データ解析を行うにあたり、第一段階として他の探査手法や地質情報等により地下構造がある程度推定されている場所で開発した手法を適用し、開発した解析手法の信頼性や特性を評価する予定である。
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Research Products
(9 results)