2012 Fiscal Year Annual Research Report
中心体制御を介した個体発生における分裂軸決定機構の解析
Project/Area Number |
12J03736
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大橋 翼 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | γ-tubulin / 中心体 / 癌細胞 / 細胞周期 / 紡錘体 |
Research Abstract |
中心体マーカーとしてγ-tubulin1-EGFPを発現するマウスを用いて解析を行った。このマウスの卵母細胞ではγ-tubulin1-EGFPは紡錘体極に局在するものの、中心体様のシグナルは検出されなかったが胚盤胞胚ではγ-tubulinl-EGFPが集積しドット状のシグナルが検出された。このマウスの受精卵を用いてタイムラプス解析を行ったところ、桑実胚期から胚盤胞期にドットが検出され、この解析結果よりこれまで不明であった中心体形成時期は胚盤胞期初期であることが示唆された。次に癌細胞におけるγ-tubulin2の発現解析を行った。これまでヒトのγ-tubulin1とγ-tubulin2は分離して検出することが出来なかったため、両者を分離できる系の開発を試みた。SDS-PAGEの組成を調整したところ、γ-tubulin1とγ-tubulin2を分離して検出することが可能となった。この分離技術を用いて25種類のヒト癌細胞株におけるγ-tubulin2の発現を検証したところ、このうち15種類の癌細胞株においてγ-tubulin2と同等のバンドが検出された。さらに特に発現が高いと思われる4種類の癌細胞株に対してTuBG2特異的siRNAおよび半定量RT-PcRを行い、このバンドが実際にγ-tubulin2であることが示された。次にこれらの細胞株に対してTUBG2特異的siRNAを用いてγ-tubulin2の発現抑制をしたところ増殖速度が抑制され、γ-tubulin2が癌細胞株でγ-tubulin1と同等の機能を有することが示唆された。一方でTUBG1特異的siRNAを用いてγ-tubulin1の発現抑制をすると、γ-tublin1が減少するのに反してγ-tubulin2の発現が増加した。また分裂期において単極の紡錘体や、極が解離していない双極性の紡錘体が増加したことから、両タンパク質の機能の違いが示唆された。これまではγ-tubulin1および2を分離出来なかったため、両者を区別して解析がされてこなかったが、本研究により初めて両者を分けて解析することが出来るようになった。また、これまでγ-tubulin2の発現は初期胚と脳のみと考えられていたが、癌細胞株でも発現していることがタンパク質レベルで初めて明らかとなった。このことはγ-tubulin2が癌細胞治療におけるターゲットなりうるだけでなく、両タンパク質の機能の差異の解明に前進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Y-tubulin-EGFPを発現するマウスを用いたライプイメージングにより中心体形成時期を決定することが出来、1番目の目的をほぼ達成することが出来た。加えて目的の一つであるY-tubulinlと2の発現と機能解析についても、これまで困難であったY-tubulin2の検出が出来るようになったことで、大きく進展できた。特にY-tubulin2が一部の癌細胞株で発現していることが確認され、さらにY-tubulin1および2の発現抑制により異なる表現系が示唆されたことで、Y-tubulin1と2の機能解析に迫ることができた。以上のことから研究目的についておおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス初期胚を用いて今回決定した中心体形成時期の前後においてY-tubulin1と2の発現変動の解析や極性形成に関わる因子の発現、細胞内局在を解析する。また現在使用している野生型のマウス初期胚に加えてて、新たに導入し現在飼育・繁殖しているTUBG2KOマウスの初期胚を用いてTUBG1やTUBG2をコードするmRNA,特異的に認識するsiRNAをインジェクションし、Y-tubulin1/2の発現時期を変動させることで、Y-tubulin1/2の発現と中心体形成、極性形成との関連を解析する。癌細胞株についてはY-tubulin2を発現する培養細胞に対して、TUBG1やTUBG2特異的siRNAによる発現抑制および遺伝子導入による過剰発現させることにより、細胞内のy-tubulin1/2のバランスを変化させ、紡錘体形成や中心体形成、微小管重合への影響を解析する.
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