2013 Fiscal Year Annual Research Report
中心体制御を介した個体発生における分裂軸決定機構の解析
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12J03736
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大橋 翼 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | γ-tubulin / 中心体 / 癌細胞 / 細胞周期 / 紡錘体 |
Research Abstract |
前年度の研究により初期胚と脳のみに発現し体細胞での発現が認められない中心体タンパク質γ-tubulin2が一部の癌細胞で異所的に発現していることが明らかとなった。そこで本研究では癌細胞におけるγ-tubulin1と2の機能的な違いの解析を目的とした。癌細胞で発現していたγ-tubulin2の変異等を確認するためγ-tubulin2を発現している癌細胞株よりTUBG2遺伝子をクローニングし2種類のcDNAを同定した。シーケンス解析によりcDNAの塩基配列を調べると片方は既知のTUBG2遺伝子と同一でありアミノ酸の変化を伴う変異は認められなかったが、もう片方はエキソン4とエキソン5の間に27bpの挿入配列が存在した。この挿入配列は霊長類のゲノムにのみ保存されていたことから、クローニングされたcDNAは霊長類特異的な新規スプライスバリアント(γ-tubulin2B)であることが示唆された。γ-tubulin2Bの発現をRT-PCRにより解析すると7種類の癌細胞株およびヒト脳サンプルで発現が認められ、癌細胞に加え正常組織でも転写が確認された。このγ-tubulin2Bの細胞内での機能を解析するためFLAGタグ融合タンパク質をHeLa細胞に発現させ局在を観察すると、他のγ-tubulinとは異なり中心体に局在されなかった。加えてγ-tubulin2Bはγ-tubulin環状複合体構成因子との結合も認められなかった。つまりγ-tubulin2Bはこれまで知られているγ-tubulinの機能を保持していない新規のγ-tubulinサブタイプである可能性が示唆され、現在は癌細胞での発現による細胞増殖への影響を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
γ-tubulinlと2の機能の違いを明らかにする計画であったが、γ-tubulin2の新規スプライスバリアント(γ-tubulin2B)を同定したため、γ-tubulin2Bの機能解析を優先的に行った。この発見のため当初の目的であるγ-tubulin1とγ-tubulin2の機能的な差異は得られていないが、発現パターンの変動による細胞への影響については良好な結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
新規に同定したγ-tubulin2スプライスバリアントを含めた3種類のγ-tubulinの機能の違いについて解析を行う。 癌細胞株あるいはマウス卵母細胞を用いてγ-tubulinlとγ-tubulin2A/Bの発現を変動させ、紡錘体形成や初期発生に与える影響を解析する。γ-tubulin2Aおよび2Bをタンパク質レベルで分離して発現を検出できる系を構築し、癌細胞株やヒト脳で発現しているγ-tubulin2の種類を決定する。またγ-tubulin2を発現している細胞株における微小管の安定性を評価する。
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Research Products
(7 results)