2012 Fiscal Year Annual Research Report
がん選択的な可視化と光線力学的療法の両機能を有する新規医療分子の創製
Project/Area Number |
12J03754
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇野 真之介 東京大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 蛍光プローブ / 光線力学療法 / がん / ローダミン / スピロ環化 |
Research Abstract |
がん選択的な診断に用いる蛍光プローブやがん選択的な光線力学的療法(PDT)に用いる光増感剤は、がん/正常部位コントラストの向上や正常部位への副作用を低減させるために、がん選択的に効果を発現させる、すなわちactivatableであることが望ましい。本研究グループでは、これまで分子内求核基を持つローダミン類がpHに応じて吸収・蛍光を示す開環体と無色・無蛍光の閉環体からなるスピロ環化平衡を示すことを見出し、次亜塩素酸の検出や、βガラクトシダーゼ活性の検出、プロテアーゼ活性を持つがん選択的な蛍光イメージングを可能とする蛍光プローブの開発に成功している。このスピロ環化平衡に基づくactivatableなプローブは高いS/N比が達成できることから本研究への応用が期待できる。そこで、本年度の研究計画にある分子骨格の選定を実施するにあたり、スピロ環化平衡の化学的な知見を深化させることが重要であると考えた。まず初めにローダミンの分子内求核基及び求電子基である蛍光団の構造を変化させたローダミン誘導体群を合成し、分子構造とスピロ環化平衡の平衡定数の関係性を精査した。その結果、ローダミンBを蛍光団とした場合、分子内求核基をヒドロキシメチル基やアミノメチル基等に変化させることで、平衡定数が大きくシフトすることを確認した。また、分子内求核基がヒドロキシメチル基の場合において、蛍光団の種類により平衡定数が大きくシフトすることを確認した。これらの結果は、分子内求核基の求核性と蛍光団の求電子性を組み合わせることにより、目的に適したpHにおいて、がん選択的に発現が亢進されている標的酵素等との反応により極めて高いがん/正常部位比を示すactivatableプローブを開発できることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
がん選択的な可視化及び光線力学的療法のいずれにおいても、がん部位に選択的に効果を発現させることが最も重要である。そのため、がん選択性を達成することができる分子骨格の探索・改良は重要な課題である。本年度の研究では、分子内スピロ環化平衡を示すローダミン誘導体群の合成及び評価により、ローダミン誘導体を種々の目的に対して高いS/N比を示す分子骨格として利用できることを示した。
|
Strategy for Future Research Activity |
蛍光プローブ及び光増感剤の開発を目指し、スピロ環化平衡を示すローダミンを分子骨格の最適化を目指す。ローミダミン誘導体の構造最適化により、組織透過性の高い 650nm以上までの長波長化する。また、細胞透過性、細胞内局在性、細胞内滞留性についての知見を得る。また、広範な応用が期待できるローダミン誘導体のスピロ環化平衡に基づくactivationは近年盛んに研究が行われている超解像蛍光イメージングプローブとしても利用できる可能性があるため、検討する予定。
|
Research Products
(4 results)