2012 Fiscal Year Annual Research Report
マオリのタトゥー、モコの復興--「伝統」の変化とアイデンティティの模索
Project/Area Number |
12J03828
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
秦 玲子 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員DC1
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Keywords | ニュージーランド・マオリ / タトゥー / 先住民運動 / 太平洋 |
Research Abstract |
平成24年度には、年次計画に基づき、ニュージーランドの先住民マオリの伝統的タトゥー、モコについて、 (1)文献資料の収集と調査(2)理論的研究(3)地域エリアの領域に焦点を当てた調査を行った。 (1)文献資料の収集と調査 ニュージーランドに渡航して国立博物館や公文書館にある記録や絵画を調査することを予定していたが、これを変更し、日本で文献を収集して調査を行った。特に、モコを研究するにあたっての基礎として、オセアニア美術全般に関する資料や、先住民マオリと白人に関する資料、マオリ美術に関する資料を収集し、幅広い視野からモコを考察した。ニュージーランドに最初に上陸した白人であるジェームズ・クックに関する書物など、マオリとモコの歴史にも視野を広げた。こうした知識は、現地の古文書などに取り組む礎となる。 (2)理論的研究 文化の動態性をめぐる議論やエスニック・アイデンティティをめぐる議論、また文化人類学の幅広い知の蓄積に関する書物を購入・読解して知識を深めた。こうした知識を、歴史的な情況や現地調査で得た現地の情況と合わせて考察し、モコに関する理解を深めてきた。今後は、長期調査やニュージーランドでの文献調査を行い、理論的な研究の成果と比較・検討することで、モコに関する理解をさらに深めていく。 (3)地域エリアの領域に焦点を当てた現地調査 予定していた通り、7月に行われたPacificArtFestivalに参加し、マオリの彫師たちの参加状況や太平洋全体の文化復興運動の現状を調査した。ポリネシアのタトゥーが復興を遂げ、自分たちの文化として注目を集めていること、また芸術祭に参加するダンサーたちがタトゥーを意識的に入れている情況を観察した。さらに、ソロモン諸島における伝統的タトゥーの復興にニュージーランド・マオリを含む他地域のタトゥー復興の影響が見られる点を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ソロモン諸島におけるフィールド調査や日本国内で収集した幅広い文献の調査による成果があった一方で、当初予定していたニュージーランドにおける文献調査や論文による成果発表を行うことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
ニュージーランドにおける文献調査及び長期のフィールド調査を行い、理論的な研究と比較・検討し、マオリの伝統的タトゥー、モコのニュージーランド国内、また海外での復興の様相を明らかにするとともに、マオリの人々によるアイデンティティの模索と「伝統」の変化を明らかにする。
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Research Products
(1 results)