2012 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属アミドを用いた高活性酸塩基協働触媒の開発及びその有機合成への応用
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12J03844
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今泉 崇紀 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 金属アミド / 酸塩基協働触媒 / 金属触媒 / 有機合成化学 |
Research Abstract |
筆者は遷移金属アミドの酸塩基協働型触媒としての可能性に着目し、高活性な触媒開発及びその有機合成反応への展開をテーマに研究を行った。 本年度は11族金属アミド触媒を用いたアゾメチンイミンと末端アルキンとの付加環化反応の開発を行った。同基質による反応はFuらのグループによる銅錯体及び三級アミンを用いた不斉反応や、水野らによるアルミナ担持銅触媒などが報告されていたものの、そのどちらにおいても5,6-二置換体が生成物として得られ、5,7-二置換体の選択的合成は知られていなかった。また得られる二環性化合物は多くの生理活性物質に含まれる構造であり、その異性体合成は生理活性部位探索に重要であった。そこで、今回の研究で銀、銅アミドを触媒としてこの反応に用いたところ、従来報告例のない5,7-二置換体が高位置選択的に得られることを発見し、適切な不斉配位子を用いることで当反応の高光学選択的反応への応用も達成した。 反応機構についての詳細な検討も行い、金属アミド触媒を用いた反応系においては従来提唱されていた協奏的機構とは異なり段階的反応機構で進行することで、生成物の位置選択性が従来反応とは逆の位置選択性で目的付加環化体を与えていることが明らかになった。また金属アミド種のアミド部位が反応において果たしている役割を実験的手法によって検討した結果、共役酸である二級アミンがその酸性度は非常に低いにもかかわらず、プロトン移動に大きな役割を果たしていることを示すことに成功した。これらのことから、金属アミドが反応系中に非常に強い塩基性条件を実現し、通常では達成困難なタンデム反応を酸塩基協働触媒として非常に効率的に進行させることを明らかにした。この結果から、現在の有機合成化学の達成すべき大きな課題の一つである高効率、高活性な触媒種の開発という観点から金属アミド種は有望な触媒種であるということが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の項で述べたように従来報告例のない位置選択性を持って目的化合物を高効率かつ高位置及び光学選択的に与えた金属アミド触媒は有望な酸塩基協働触媒であると示すことができた。また当反応における段階的反応機構は金属部位の持つルイス酸性とアミド部位の持つブレンステッド塩基性による協働的基質活性化によるところが大きく、特にアミド部位の共役酸が反応系中においてプロトン移動を行う事実を実験的に示したことで今後の新規金属アミド触媒開発やその合成反応への展開における大きな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
近年の環境意識の高まりに伴って、Sustainable Chemistryの必要性が強く叫ばれている。そのような背景の中で有機合成化学において注目を集めているのはCO2である。安価であり、無毒かつ燃焼による最終生成物として発生するCO2を炭素源として用いることが可能であれば有機化学の持続的発展に大きく寄与できると考えられる。そこで私は金属アミドを用いたCO2の活性化及び合成反応への応用を考えている。 同時に金属アミド上の対アニオンを変えることにより金属上のルイス酸性を調整できるであろうことから、多価金属を母核として用いた新規金属アミド触媒の合成及び反応への展開を検討する。
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Research Products
(3 results)