2013 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属アミドを用いた高活性酸塩基協働触媒の開発及びその有機合成への応用
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12J03844
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今泉 崇紀 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 二酸化炭素固定 / ミセル内反応 / イソシアネート / アジド化合物 |
Research Abstract |
今年度は遷移金属アミド触媒によるアゾメチンイミンと末端アルキンとの環化反応で得た知見を元に、ニトロンと末端アルキンとの反応の検討を行い、今後の遷移金属アミド触媒の展開への指標となる興味深い知見を得た。同時に、前年度後半から開始した二酸化炭素固定化反応のさらなる検討を行った。二酸化炭素は室温、大気圧化において気体であり、その有機分子への効率的な従来の有機合成化学では困難とされていた。そこでこれまで開発した遷移金属アミド触媒を反応に適用した知見を用いて二酸化炭素のような不活性な基質の活性化を行う検討を行った。二酸化炭素の熱力学的安定性を克服するため、反応基質としてオルト安息香酸アジドを選択し、系中でイソシアネートを生成した後に分子内環化によりイサト酸無水物を与える反応の検討を行った。結果、機溶媒中80℃で反応は円滑に進行し、目的物を与えた。しかしながら、反応検討の段階においてこの反応が純水溶媒中において僅かにではあるが目的物を与えることが明らかになった。そこで、水・有機溶媒混合系において界面活性剤を用い、ミセル構造内で反応を行うことにより反応中間体の加水分解を抑制し、収率の向上が望めるのではないかと考え検討を行った。 結果、有機溶媒中での反応より低い反応温度で同等の収率を得ることに成功した。これは二酸化炭素がミセル中に取り込まれミセル効果によって実効二酸化炭素濃度の向上が起ると同時に、更に水中の炭酸アニオンがミセル表面のアンモニウムカチオンと相互作用することでミセル周辺での二酸化炭素濃度が向上したためと考えられる。このことから、四級アンモニウム塩によって構築されたミセル構造は他の二酸化炭素固定化反応に対しても有効であろうことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遷移金属アミド触媒を用いたニトロンと末端アルキンの反応の検討において非常に興味深い知見が得られ、今後の遷移金属アミド触媒の反応への応用に大きく影響すると考えられるため。また二酸化炭素を利用した反応においてもミセルを反応場とすることで効率的な反応を達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要でも述べたとおり、水・有機溶媒混合溶媒系において4級アンモニウム界面活性剤により構築されたミセルは種々の二酸化炭素固定化反応に対する有効な反応場であることが示唆された。そこでこの戦略を用いて従来不活性であると考えられていた二酸化炭素の種々の固定化反応を検討する。また遷移金属アミド触媒の有機合成反応への展開を更に検討する。
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Research Products
(1 results)