2012 Fiscal Year Annual Research Report
転写制御因子による始原生殖細胞エピゲノムリプログラミングの再構成と分子機構の解明
Project/Area Number |
12J03853
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中木 文雄 京都大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 始原生殖細胞 / 多能性幹細胞 / 転写因子 |
Research Abstract |
本研究では、マウス始原生殖細胞(primordial germ cells ; PGCs)の運命決定過程におけるエピジェネティックリプログラミングの分子機構を解明することを目標として、in vitroにおける始原生殖細胞様細胞(primordial germ cell-like cells ; PGCLCs)誘導システムを活用し、運命決定に重要な転写因子の機能を解析している。今年度は、解析に用いる細胞の樹立を行うとともに、PGCsの運命決定に十分な転写因子(群)を同定した。 PGCsのレポーター遺伝子であるBlimp1-mVenus、stella-ECFP(BVSC)を有し、テトラサイクリン発現誘導システムに必要なreverse tetracycline-transactivator(rtTA)がRosa26遺伝子座にノックインされ恒常的に発現するBVSCR26rtTAES細胞を樹立した。,さらに、この細胞にPGC運命決定に重要な転写因子であるBlimp1、Prdm14、Tfap2c(AP2γ)を、piggyBacトランスポゾンを利用して導入した。これらの外来遺伝子は、ドキシサイクリン(テトラサイクリンアナログ)を培地に添加すると発現が活性化される。まず、先行研究の通り、マウスES細胞を、PGCLCsへと分化する能力のあるEpiblast-like cells(EpiLCs)に分化させた。その上で、Blimp1,Prdm14,Tfap2cの3因子をEpiLcsに発現させた。その結果、サイトカインで誘導したときと同様に2種のレポーター遺伝子(Bvsc)が陽性となった。これらの細胞がPGCsとして機能するか確認するために、精細管移植を行ったところ、正常形態の精子への分化が確認された。さらに、得られた精子を野生型の卵に注入(Intracytoplasmic sperm injection)したところ、正常な発生が認められた。これらの細胞をtranscription factor-induced primordial germ cell-like cells(TF-PGCLCs)と命名した。 TF-PGCLCsの誘導においては、PGCsの運命決定で一過性に生じる中胚葉プログラムの活性化を経ていないことや、ES細胞からは直接誘導されないことが観察された。これらから、中胚葉プログラムの活性化がPGC誘導の必要条件ではないこと、転写因子による誘導では特定の細胞の状態(cellular context)が必要であることなどの示唆を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究年度初年度であるが、当初の計画では2年目に達成できると考えていた「生殖細胞の誘導に十分な転写因子の同定」および「誘導した細胞が生殖細胞として機能するかの検証」まで終了しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
同定された3因子による生殖細胞運命決定機構解明のため、マイクロアレイ法や、次世代シーケンサーを利用したRNAシーケンス法、クロマチン免疫沈降法などを用いてゲノムワイドに解析を行う。これらによってまず3因子の標的遺伝子の同定を試みる。
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Research Products
(2 results)