2012 Fiscal Year Annual Research Report
多重水素結合による精密な反応場構築を志向した新規キラル有機分子触媒の開発
Project/Area Number |
12J03864
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上木 佑介 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 有機化学 / 有機触媒 / 不斉合成 / 環境調和 / 塩基 / 水素結合 / 分子認識 / 分子変換 |
Research Abstract |
金属を含まないキラル有機分子触媒の化学は、低環境負荷型プロセスが望まれる昨今、最も注目が高まっている研究領域の一つとなっている。これまでに世界中で活発に研究が行われ、工業規模での実用化にも耐えうる有用な触媒が開発さてれてきた。しかしながらその一方で、その触媒活性という面では金属触媒に及ばず、基質の適用範囲が狭い場合が多いことなどの問題を抱え、より力強い触媒系の開発による汎用性の拡大が望まれている。申請者は、「多重水素結合」を基盤として、反応活性種であるアニオン種を高い精度で制御できる「精密な反応場の構築」を念頭に、新たなアニオン認識型有機イオン対触媒を創製することに加え、その潜在機能を引き出すことにより挑戦的分子変換反応の開発につなげ、当該分野における新たな領域を拓くことを目的として研究を行っている。 今回、新たな触媒系の構築を目指す端緒として、新規キラルビスグアニジノプロトンスポンジを触媒の基本構造として取り上げ、その設計開発を行った。具体的には、母骨格となるプロトンスポンジに対し、様々なキラルグアニジン構造を組み合わせることで、多様な触媒ライブラリの構築及び、その効率的合成法の確立に成功した。また、合成した触媒の基礎的知見を収集すると共に、本触媒の特徴である超強塩基性を利用した、エステルの直截的不斉アルドール反応への適用を目指し、その可能性の追求を図った。しかし、現在のところ有効な反応系の構築には至っていない。 今回得られた基礎的知見は、今後の反応系開発において非常に重要であり、今後更なる触媒の構造変換を行い、本触媒の潜在能力を引き出すことで、従来適用が困難であった結合形成反応への適用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際の反応系への適用には至っていないが、今回合成した多様な触媒ライブラリから得られた基礎的知見は、今後、新規反応系を構築する上で必要不可欠な情報であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、アニオンを水素結合により捕捉する中心部位における孤立電子対の重なり効果によるプロトン受容能のさらなる向上を図ることで、より強い塩基性の獲得を目指す。また、X線による三次元構造解析に加え、分子軌道計算を用いた触媒構造のモデリングを行うことで、より精密かつ合理的な反応設計に基づく研究開発を進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)