2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J03881
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
王 佑香梨 (星野 佑香梨) 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | SMAD4 / ALDH1 / ChIP解析 / 未分化性マーカー |
Research Abstract |
本年度は腫瘍形成における(1)SMAD4の機能解析、(2)ALDH1ゲノム上へのSMAD4の結合の確認、(3)TGF-β-SMAD4により発現調節を受ける遺伝子の探索を行った。 (1)野生型SMAD4発現ヒト膵癌細胞株Panc-1にレンチウィルスを用いてshSMAD4を導入し、恒常的にSAMD4発現をノックダウンした細胞(Panc-1/shSIWD4細胞)を樹立し、in vivoにおける腫瘍形成を評価した。Panc-1/shSMAD4細胞およびコントロール細胞をヌードマウスの皮下に移植したところ、Panc-1/shSMAD4細胞を移植したマウス群で腫瘍の増大が確認できたことから、膵癌においてSMAD4がanti-oncogenic factorとして機能することが示唆された。 (2)SUIT-2細胞を用いたChIP解析によりSMAD4がALDH1ゲノムに結合するか否かを検討したところ、TGF-β刺激を行ったSUIT-2細胞では、ALDH1ゲノム上流領域にSMAD4が結合していることが分かった。この結果から、SMAD4によるALDH1ゲノムとの直接的もしくは他の転写共役因子を含めた結合を介した転写制御機構の存在が示唆された。 (3)癌幹細胞の特性のひとつとして未分化性の保持がある。ALDH1-膵癌幹細胞と比較し、ALDH1+膵癌幹細胞は未分化性マーカーであるNANOG、OCT4A、SOX2の発現が亢進している。この未分化性マーカーがSMAD4による発現制御を受けるか否かを評価したところ、Panc-1/shSMAD4細胞においてNANOG、OCT4A、SOX2の発現上昇を認めた。 本年度の結果により、TGF-βが癌幹細胞の分化を促進することで膵癌幹細胞を制御することが分かった。これはTGF-βが分化誘導剤として使用できる可能性を示唆するものであり、今後の治療戦略において重要な知見であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は(1)SMAD4を介して発現調節を受ける遺伝子の探索(2)膵癌幹細胞特異的に発現が亢進または抑制している遺伝子の探索(3)ALDH1の膵癌幹細胞マーカーとしての機能の確認を予定していた。(1)Panc-1/shSMAD4細胞を用いた検討により、ALDH1の他にNANOG、OCT4A、SOX2がTGF-β-SMAD4の標的遺伝子として新たに抽出できた。(2)ALDH1-細胞とALDHI+細胞の遺伝子発現を解析したところ、NANOG、OCT4A、SOX2がALDH1+細胞で特異的に発現亢進することが分かった。(3)ALDH1-細胞と肌DH+細胞の腫瘍形成をin vivoで評価した。ALDHI+細胞はALDH1-細胞と比較して高い腫瘍形成能を有することが分かった。以上から本年度はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、TGF-R/BMPの膵癌幹細胞に対する作用を生化学的な検討により評価する。 ALDHIのレポーターコンストラクトを作製し、TGF-βおよびBMP刺激によりSMAD4もしくはSMAD4を含む転写複合体がALDH1ゲノムのどの領域に強く結合するか詳細に評価する。また、本年度新たに抽出した未分化性マーカーのゲノム上にSMAI)4が結合し、TGF-R-SMAD4シグナルがこれら遺伝子の発現制御に直接作用するか、SMAD4抗体を用いたChlP解析により評価する。また、ヒト膵癌症例組織において、TGF-β/BMPシグナルの活性、ALDH1発現量、症例の予後に相関があるか検討する。特に進行膵癌症例の原発巣や転移巣ではALDH1発現が高いことが分かっているため、化学療法が奏功しなかった症例での検討を行う。
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Research Products
(5 results)