2013 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯域の気候変動モードと亜熱帯ダイポールモードの関係
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12J03887
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
森岡 優志 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 特別研究員(PD)
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Keywords | 亜熱帯ダイポール / エルニーニョ・南方振動 / 南極振動 / 海面水温 / 亜熱帯高気圧 / 移動性擾乱 |
Research Abstract |
亜熱帯ダイポールは南半球中緯度に存在する気候変動現象で、各海盆の北東部と南西部に平年より冷たい海面水温と暖かい海面水温を伴います。亜熱帯ダイポールの発生には、亜熱帯高気圧の変動が関わっており、熱帯太平洋のエルニーニョ・南方振動(ENSO)や南半球中高緯度の南極振動からの影響が示唆されています。しかし、熱帯域と南半球中高緯度の気候変動現象がどの程度亜熱帯ダイポールの発生に関わっているか明らかでありません。 そこで、高解像度大気海洋海氷結合モデル「SINTEX-F2」を用いて実験を行い、亜熱帯高気圧の変動メカニズムを調べました。熱帯域の各海盆において海面水温の経年変動を抑えた実験を行ったところ、各海盆で亜熱帯高気圧が南側で強まって亜熱帯ダイポールが発生しましたが、亜熱帯ダイポールの発生頻度や振幅には変化が見られませんでした。また、亜熱帯高気圧の南方強化には、南極振動が強く関わっていました。これらの結果は、ENSOのような熱帯域の気候変動現象が存在しなくても、南半球中高緯度の南極振動が、亜熱帯高気圧を変動させ、亜熱帯ダイポールを発生させることを示唆しています。 次に、亜熱帯ダイポールに伴う海面水温変動が亜熱帯高気圧の変動に影響を及ぼしているか、海洋から大気へのフィードバック過程について調べました。そこで、南インド洋で海面水温の経年変動を抑えた実験を行ったところ、亜熱帯ダイポールが発生する年に見られる亜熱帯高気圧の南方強化が2月には見られませんでした。2月は亜熱帯ダイポールが最も発達する月であるため、南北に正と負の海面水温偏差ができると、南北の水温勾配が正の海面水温偏差の北側で弱く、南側で強くなります。これに伴い、大気の移動性擾乱の活動が正の海面水温偏差の北側で弱まり、南側で強まります。こうして、移動性擾乱の経路が極側にずれることで、亜熱帯高気圧を南側で強化させていることが分かりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
亜熱帯ダイポールの発生に関わる亜熱帯高気圧の変動について、高解像度大気海洋海氷結合モデルを用いて実験を行い、熱帯域と南半球中高緯度の気候変動現象からの相対的な影響を明らかにしました。また、亜熱帯ダイポールに伴う海面水温変動が亜熱帯高気圧の変動に関わっていることが分かりました。これらの成果は、国内外の学会で発表され、国際誌2編(うち1編は改訂中)にまとめることができ、当初の計画以上に進展しています。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、亜熱帯ダイポールに伴う海面水温変動が局所的に亜熱帯高気圧の変動に影響することが分かりましたが、遠方の地域まで影響を及ぼしているか未だ分かりません。亜熱帯ダイポールが熱帯太平洋のエルニーニョ・南方振動の発生に関わっていることを示唆した先行研究もあるため、亜熱帯ダイポールが大気の変動を通して熱帯域や南半球中高緯度の気候変動現象にどのような影響を及ぼしているか、高解像度大気海洋海氷結合モデルを用いて実験を行い、物理メカニズムを詳しく調べていきます。
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Research Products
(12 results)