2013 Fiscal Year Annual Research Report
サンゴ礁石灰化生物の生理生態に対する複合的環境変動の影響評価
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12J03911
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
田中 泰章 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | サンゴ / 褐虫藻 / 石灰藻 / 栄養塩 / 海洋酸性化 / 温暖化 / 石灰化 / 光合成 |
Research Abstract |
1. 2012年7-8月にかけて^<15>N安定同位体トレーサーを使った2か月間のサンゴ飼育実験を行い、平成25年度は得られたデータを用いてサンゴ―褐虫藻共生系の窒素代謝モデルを作成した。その結果、褐虫藻が利用する窒素の半分以上は海水からではなく、宿主サンゴから得ていること、その割合はサンゴの種や海水中の窒素 : リンバランス、動物プランクトンの有無などの要因によって変化することなどを明らかにした。 2, 造礁サンゴの初期ポリプは、サンゴ産卵後に最初に海底基盤に定着する段階であり、長期的なサンゴ被度の増減を左右する重要な生物である。平成25年度はこの初期ポリプについて、海洋酸性化と栄養塩利用の複合効果を評価することを目的として、2013年6月から7月にかけて実験を行った。その結果、貧栄養海水で飼育されたコユビミドリイシ(Acopora digitigera)の初期ポリプは酸性化によって骨格重量成長速度が有意に低下したのに対し、栄養塩添加区で飼育されたポリプの成長速度は低下しなかった。この結果は、海水中から栄養塩を多く吸収したポリプでは、褐虫藻の光合成速度が増加したために石灰化に対する酸性化の負効果が緩和されたことを示唆する。褐虫藻の栄養状態によって、海洋酸性化に対する石灰化応答は大きく異なることが予想される。 3. 石灰藤は光合成や石灰化などの生物活動によってサンゴ礁生態系の物質循環に寄与し、さらに新規サンゴの定着基盤としても重要な役割を果たす。近年は高水温や栄養塩負荷によって、石灰藻の減少が懸念されており、それらの相互作用を評価することを目的として本研究課題で実験を行った。2013年10月から12月にかけてアナアキイシモ(Hydrolithon onkodes)を用いて実験を行った結果、27度に比べて30度、32度では石灰化速度が大きく減少したが、一方でリン酸塩負荷の影響は検出できなかった。従って、リン酸塩負荷よりも高水温の方が、石灰藻の石灰化速度に大きな影響を与えることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた実験は順調に進行しており、得られたデータを用いて論文もすでに投稿している。一部のデータは現在も解析中で、順次公表していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までは主に単独の生物について環境影響評価を行ってきたが、最終年度である平成26年度はより包括的・現実的な評価を行うため、現場条件に近づけた実験を想定している。具体的には、サンゴ礁海水を連続的に屋外実験施設に汲み上げ、海洋酸性化や栄養塩負荷などの条件を設定し、混入する石灰藻や海藻への影響を長期的に調査する予定である。
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Research Products
(6 results)