2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヒアルロン酸パウダーを用いた浸軟皮膚に対するアドバンストスキンケア技術の開発
Project/Area Number |
12J03913
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
麦田 裕子 (山本 裕子) 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 皮膚浸軟 / 失禁 / 皮膚障害 / 消化酵素 |
Research Abstract |
背景 これまで私達の先行研究では、皮膚浸軟(ふやけ)モデルラットを用いて便失禁に暴露した皮膚状態を再現し、浸軟皮膚へ経皮侵入したタンパク質分解酵素および細菌が内部から組織を分解することによる皮膚障害発生過程を明らかにした。本研究では、失禁による皮膚障害に対する新たな介入法開発の基盤となる知見を得ることを目的に、皮膚浸軟モデルラットにおける皮膚障害の回復過程を継時的に観察した。 方法 SDラット(6ヶ月齢、♂)の除毛3日後の背部に、タンパク質分解酵素含有溶液による皮膚浸軟を作成し、その後緑膿菌懸濁液含有ろ紙を貼付した。肉眼的所見、組織学的所見(HE染色)、角化細胞の増殖(抗Ki_67免疫染 色)、角化細胞の分化(抗サイトケラチン10免疫染色)、細菌の局在(免疫染色)を継時的に解析した。 結果 皮膚浸軟Day 1では、先行研究と同様の肉眼的所見(発赤、点状出血)、組織学的所見(表皮有棘層および真皮乳頭層の組織損傷、細菌凝集塊の形成)が認められた。継時的な解析の結果、肉眼的発赤は3日目まで増強し、それ以降は徐々に消退、7日目に治癒した。組織学的には、悪化過程にある2日目では細菌凝集塊の真皮網状層への拡大が認められ、悪化から改善に転ずる3日目の組織では真皮内の細菌凝集塊直下レベルで毛包周囲からケラチノサイト層が伸長する様子が観察された。この真皮内ケラチノサイト層は、創傷治癒における上皮化とは異なる、未分化ケラチノサイトの活発な増殖による伸長であることが示された。 研究の意義 従来、失禁による皮膚障害は皮膚炎として定義され治療法が選択されていたが、今回の結果より、失禁による皮膚障害は皮膚炎とは異なる病態および治癒過程であることが示唆された。失禁による皮膚障害の病態に即した新たな介入法の開発が必要であり、その着眼点として真皮ケラチノサイト層の伸長の促進法が効果的であることが示唆された。(791字)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
失禁による皮膚障害に対する介入技術の具体的方法の考案・開発を翌年度以降に計画しており、本年度の研究結果では、介入法考案・開発の着眼点が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
便失禁による皮膚浸軟を考える上で、タンパク質分解酵素と並んで主要な便中消化酵素である脂質分解酵素の影響を考慮することは重要であるため、脂質分解酵素が皮膚浸軟および皮膚障害発生に及ぼす影響を観察する実験を実施する予定である。皮膚浸軟、タンパク質分解酵素および脂質分解酵素が皮膚障害発生に及ぼす影響を明らかにしたうえで、失禁による皮膚障害に対する介入法を考案、開発する予定である。
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Research Products
(1 results)