2012 Fiscal Year Annual Research Report
ピンサー型ホスファアルケン配位子を有する9族遷移金属錯体の合成と触媒機能
Project/Area Number |
12J03950
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
張 永宏 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 低配位リン配位子 / ノンイノセント配位子 / イリジウム錯体 / N-H結合活性化 |
Research Abstract |
(1)ビス(ボスファエテニル)ピリジン配位子(BPEP-H)を有するイリジウム(1)錯体[IrC1(BPEP-H)](1)を合成し、これを触媒に用いてアルコールによるアミンのN-アルキル化に取り組んだ。触媒量の錯体1(1mol%)およびCsOH(10mo1%)存在下、ベンジルアルコールによるアゴリンのN-アルキル化を検討した。反応は100℃、24時間でほぼ完結し、フェニルベンジルアミンが94%の収率で得られた。本反応は、Me、OMe、Clなど種々の置換基を有する基質を用いた場合にも同様に進行した。また、直鎖の脂肪族アルコールや脂肪族アミンを基質として用いても、良好な収率で対応する二級アミンが得られた。錯体1は、二級アミンとベンジルアルコールとの反応に対しても触媒活性を示し、KH2PO4塩基の存在下に、対応する三級アミンが良好な収率で得られた。 (2)[IrCl(BPEP-H)](1)から2段階の反応により脱芳香族化PNPピンサー錯体[IrCl(BPEP-H*)](18-crown-6-K)(3)が合成できることを見出した。まず、錯体1のトルエン溶液を70℃に加熱すると、BPEP-H配位子のt-Bu基のひとつがP=C結合にC-H付加し、ホスフィン-ホスファエテン型の非対称PNPピンサー錯体[IrCl(BPEP-HH)](2)が単一に得られた。続いて、18-crown-6の存在下、錯体2とKO(t-Bu)との反応により錯体3が73%の収率で得られた。 (3)錯体3は、アミンのN-H結合切断に高い反応性を示した。すなわち、一気圧のアンモニアと室温で速やかに反応し、対応するアミド錯体[Ir(NH2)(BPEP-HH)](4a)が定量的に得られた。また、アニリンやヘキシルアミンとも室温で反応し、対応するアミド錯体[Ir(NHPh)(BPEP-HH)](4b)および[Ir(NHC6H13)(BPEP-HH)](4c)が定量的に得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[lrC1(BPEP-H)]錯体(1)が研究目標のひとつであったアルコールによるアミンの触媒的N-アルキル化反応に対して、既存の高効率触媒と同等かそれ以上の活性と基質適用範囲を示すことを明らかにした。またその過程で、錯体1からホスフィン・ホスファアルケン型非対称PNPピンサー錯体を簡便に合成できることを見いだし、合成した錯体がノンイノセント性を有するとともに、アンモニアのN-H結合切断に対して極めて高い反応性を示すことを明らかにした。後者の結果は、今後の本研究の礎となるもので、研究計画当初の予想を超えた重要な成果を期待させるものである。本研究は極めて順調に進展している。なお、触媒的N一アルキル化反応に関する論文が、アメリカ化学会Organometallics誌のMostReadArticles(4月)にランキングした。
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Strategy for Future Research Activity |
アンモニアを用いた直接的アミン化触媒反応の開発は現代の錯体触媒化学の重要なターゲットであり、遷移金属錯体によるアンモニアのN-H結合切断反応はその素反応として重要である。上記の錯体3の反応性は従来の錯体を凌駕するものである。 本研究では、N-H結合切断機構と生成するアミド錯体の反応性に関する検討を進め、直接的アミン化触媒反応の開発へと研究を展開したいと考えている。
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Research Products
(3 results)