2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J03995
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
犬伏 正信 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カオス / 流体乱流 / リャプノフ解析 |
Research Abstract |
私が平成24年度に行った研究は『クエット乱流の軌道不安定性(初期値に対する鋭敏な依存性)』を,近年開発された計算手法である共変リャプノブ解析を用いて調べたものである.この研究は特別研究員に採用される際に提出した研究計画の一部であり,計画に沿って研究し国内研究集会・学会や海外(スペイン)の国際会議で発表することが出来た.このことは研究奨励金や科学研究費補助金で購入した書籍や参加した研究集会における情報交換・議論によるところが大きく,特に科学研究費補助金で購入したコンピュータ・周辺機器は本研究に欠くことのできないものであった. 本研究は,私がクエット乱流の共変リャプノブ解析の数値計算を行い,山田道夫教授と竹広真一准教授と何度も議論を行うことで進めてきた.壁乱流は壁近傍の乱流であり,物理・工学的に重要ながら,そこで見られる壁乱流に共通の現象(再生成サイクル)の理解は十分とは言えない.特に,現状ではモデル化による理解や現象論的な説明が部分的になされているのみで,支配方程式であるナビエーストークス方程式に基づいた理解はほとんど得られていない. そこで本研究ではナビエストークス方程式の解軌道の安定性を調べることで,従来とは異なる視点から再生成サイクルを特徴付けた.解軌道の安定性は共変リャプノフ解析を用い,リャプノフ指数とリャプノブベクトルを計算することで調べた.リャプノブ指数は無限小摂動の指数的増大/減少率であり,リャプノブベクトルはそれを与える無限小摂動ベクトルである.まず,"流れ方向渦の局在化"を用いて再生成サイクルをPhase(i)とPhase(ii)に分割し,それぞれに対して局所リャプノブ指数を計算することで軌道不安定性を調べた.その結果,phase(i)では軌道不安定であるが,Phase(ii)では不安定性が見られなかった.さらに,不安定性が見られるPhase(i)について,対応する共変リャプノブベクトルを調べ,不安定性を明らかにした.クエット乱流の乱流維持メカニズムを議論するためにエネルギーの収支解析を行い,従来の"自己維持過程"とは異なるメカニズムを議論・提案した.軌道不安定性は乱流をカオスとしてみたときの基本的な特徴であるので,上記の結果は壁乱流の基本的な理解に貢献するものと考えている.
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Research Products
(3 results)