2012 Fiscal Year Annual Research Report
計算統計学に基づく効率的な大域的最適化アプローチの開発
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12J04020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
合田 隆 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 計算統計学 / 大域的最適化 / 準モンテカルロ法 / 一様分布列 |
Research Abstract |
今年度は(1)最適化する関数が持つ可分離性を推定する手法の開発と(2)高次元単位立方体内に一様に分布する点列の構成法について研究した。(1)は高次元の最適化問題を互いに依存性のない複数の低次元の最適化問題に帰着させるための試みであり、(2)は大域的最適化において確率変数空間に一様な点列を発生させることで最適解の探索効率を改善することを目的としている。また、一様分布列はマルコフ連鎖モンテカルロ法にも用いられることから、焼きなまし法などの最適化アルゴリズムにおいて候補の提案にも用いることができると考えられる。ただし、これについては今後の研究課題である。今年度の成果は以下の通りである。(1)についてはANOVA分解で用いられる関数の分解公式を用いて、分離可能な関数が満たす必要十分条件を導出し、それに基づいて近似的に可分離性を推定するためのアルゴリズムを提案した。これは与えられた互いに素な変数の集合に対する可分離性の推定法であるが、このアルゴリズムを拡張して、可分離な変数の集合の数と各集合の要素を全て推定するアルゴリズムを提案した。また、(2)についてはL_2ディスクレパンシーという一様性を測る量に着目し、それを確率的に小さくするような点列の構成法とそれによって得られる点列に対するL_2ディスクレパンシーの上界について議論した。さらに、既存のよく知られる一様分布列をスクランブリングと呼ばれる方法でランダム化した場合に、L_2ディスクレパンシーの平均二乗偏差が最適な収束レートを達成できることを証明した。このように一様性の高い点列は大域的最適化への応用にも適していると考えらえる。以上の(1)と(2)の成果について、いずれも論文にまとめ投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記した(1)については予定通りに研究が進展し、論文を投稿している。ただし、最適化する関数の性質を推定するという観点からはまだ一部分のみの理解であり、多峰性など他の性質について推定するアルゴリズムの開発を必要であると考えている。一方、(2)については当初の計画以上に理論、実装とも研究成果が挙げられた。以上から本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に進んでいることから大幅な研究計画の変更はない。軽微な変更としては、当初考えていたように一様分布列をそのまま大域的最適化に用いるのではなく、焼きなまし法のような解探索アルゴリズムにおいて候補の提案ならびに受理・棄却に用いることにより、効率的な大域解の探索を行うようなアルゴリズムを考えている。したがって、その整合性を理論的に示すための数理的アプローチの考究に時間を費やすことが必要であり、実装は理論的検証を終えてから行う。
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Research Products
(1 results)