2012 Fiscal Year Annual Research Report
相溶性高分子ブレンド系の成分ダイナミクス:動的不均一性の効果
Project/Area Number |
12J04049
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川崎 洋志 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | レオロジー / 高分子ブレンド / 動的不均一性 / 誘電緩和 / 会合性高分子 |
Research Abstract |
異種高分子相溶性ブレンド系のダイナミクスを理解する上では,各成分のセグメント運動性に差があること(動的不均一性)を考慮する必要がある.相溶性高分子二成分ブレンドで,両成分がともにゴム状態にある場合については,セグメント運動性の差が各成分のダイナミクスに与える効果の詳細は以前の研究で明らかになっている.しかし,遅い成分(ガラス転移温度Tgが高い成分)がガラス状態にある場合については,セグメント運動性の差が速い成分(低Tg成分)のダイナミクスに与える効果の詳細は未だ分かっていない.平成24年度は,この点について明らかにすることを目的として研究を遂行した.まず,ポリイソプレン(PI)およびポリ(p-tert-ブチルスチレン)(PtBS)をアニオン重合した.得られたPIとPtBSを混合することでブレンドを得た.ブレンド中でPIのみが主鎖骨格に並行なA型電気双極子を持つため,長時間域ではPIの大規模運動(鎖全体にわたる運動)のみが誘電活性である.誘電緩和測定を行うことで,ブレンド中でPtBSがガラス状態にある中でもPIが大規模運動していることを明らかにした.次に,ブレンド中とバルク中でのPIの大規模緩和時間を比較した.その結果,PIの大規模緩和時間は混合によるセグメント摩擦の変化以上に遅延されていることがわかった.この原因として,PtBSがPI鎖にトポロジー的拘束を与えていることが考えられる.この考えに基づき,Marrucciのモデルを援用して,PIの大規模緩和時間を記述するモデルの構築を試みた.構築したモデルにより,PIの大規模緩和時間の分子量依存性はある程度よく説明できることがわかった.さらに,本研究と平行して,末端会合性高分子のダイナミクスに関する研究も行った.この研究結果について国外のワークショップで発表した.この研究は,京都大学薬学研究科との共同研究として行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,研究の目的として挙げた,ブレンド中で遅い成分がガラス状態となる低温での,ゴム状態にある速い成分の鎖全体に渡る運動(大規模運動)の機構を解明することに取り組んだ.まず,ポリイソプレン(PI:速い成分)およびp-tert-ブチルスチレン(PtBS:遅い成分)の合成を行い,それらを混合してブレンドを得た.ガラス状態にあるPtBS中でのPIの大規模運動を選択的に検知し,緩和時間データを得た.ブレンド中PIの大規模運動の緩和時間を予測するモデルを構築した.このモデルにより,実験データはある程度よく説明されることがわかった.しかし,モデルの妥当性の検証は未だ行われていない.以上のことから,研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,遅い成分がガラス状態にある中での速い成分の大規模運動機構に関する知見を深化させるために,平成24年度に考案したモデルを検証する.PtBSがガラス状態となる低温でのPIのセグメントの拡散定数の時間依存性を実験的に検知し,これが,モデルによる計算値と一致することを確かめる.この手法として,放射性炭素で標識したPIに対して核磁気緩和測定を行うことで,ブレンド中のPIセグメントの拡散を選択的に検知する方法を検討している.
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Research Products
(1 results)