2012 Fiscal Year Annual Research Report
ガーナ北東部における輸出用カゴの生産と流通に関する社会経済的研究
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12J04090
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
牛久 晴香 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ガーナ北東部 / 地場産業 / 国際市場 / 手工芸品・籠細工 / 生業と生産 |
Research Abstract |
本研究は、ガーナ北東部の限られた地域で生産され日本や欧米へ輸出される手工芸品1ボルガ・バスケット」を対象に、この産業に関わるガーナの人びとがグローバルな市場機会あるいはリスクにどのように対応しているのかを、生産と流通の両面から総合的に検討することを目的としている。 今年度は生産面を集中的に調査した。以下が主な発見である。、 1)原料とその採集方法:現地調査の結果、原料にはPanicummaximumの稈が使われていることが分かった。原料は生産地には自生せず、約600km離れた南部ガーナの特定地域で、同地の住民によって採集される。原料買付人に同行して採集地2村を訪ねたところ、採集者はボルガ・バスケットを製作しないうえ、買付人が稈を細かく点検しないため、採集者にとっては質(籠細工に向く太さ・長さ)よりも、量を集めることが重要であることが分かった。 2)不均質な原料から均質な製品を作り出す仕組み:上記の事情により、生産者が購入する稈束には様々な太さの稈が含まれており、その違いは最大4mmに達した。しかし、日本や欧米で流通するには、編み目の均質性や同一製品間の均質性が求められる。そのためには稈の太さを揃える必要があるが、稈の費用は売上の2/3に及ぶため、生産者にとっては稈を無駄なく使いきることが重要となる。上記の矛盾を踏まえて製作過程を調べた結果、生産者は稈の太さに合わせて構造とデザインの異なる2つのタイプを作り分けていることが分かった。消費者の嗜好や用途に対応するためにみえるボルガ・バスケットの2つのタイプは、生産者にとっては目の揃った均質な製品を作りつつ、購入した稈束を無駄なく使いきるための手段となっていたのである。 今年度の調査により、生産者は無理なくしなやかに市場の要望に対応していることを一部示すことができた。未だ実証研究が不足しているアフリカ農村とグローバル市場という課題に一つの、しかし重要な事例を提供できたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の現地調査によって、「ボルガ・バスケット産業に関わるガーナの人びとが、グローバルな市場機会にどのように対応しているのかを明らかする」という本研究の目的を大きく前進させる実証的データを収集することができた。また、今回の調査で見えてきた「無理なく」という要素は、(来年度の調査で明らかにしようと考えている)人びとの生計活動の選択基準やバスケット製作へのコミットメントなどを考える上で大きな手がかりになると考えている。来年度の長期調査への影響を鑑みても、研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は1)生産者の生計活動の中にバスケット製作を位置付けていく作業、2)生産者から先進国の市場までがどのような形でつながっているのかを実証的に明らかにする作業を試みる。1)については、複数の生産者の季節ごとの労働内容とその時間配分、各生計活動から得る収入を綿密に調査する。2)については、生産者とも企業とも直接交渉する立場にある,末端の仲介業者にとくに着目する。異なる2者をつなぐ仲介業者の重要性については、その内容の一部をすでに投稿論文にまとめたが、彼らの行動やその意図をさらに深く観察し、流通システムに潜(顕)在する問題点やその解消に至るプロセスなどを具体的に明らかにする。1)、2)を達成するために、8か月間現地に滞在し、参与観察と聞き取り調査に基づく詳細なデータを収集する。そのうえでこれまでの調査結果を総合的に分析し、地域の人びとがどのような形でグローバル市場との関係をとり結んでいるのかを多角的に考察する。
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Research Products
(3 results)