2012 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫系におけるHMGBタンパク質を中心とした新規核酸認識機構の解明
Project/Area Number |
12J04120
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千葉 志穂 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細胞内核酸認識機構 / 自然免疫 |
Research Abstract |
細胞内核酸認識に関与する候補分子としてスクリーニングから得られた分子のうち,コンディショナル遺伝子欠損(cKO)マウスを作製した2つの分子(ここではNAS1,NAS2とする)について,全身性にCreリコンビナーゼを発現するCAG-Creマウスと掛け合わせを行い、全身性遺伝子欠損(KO)をした場合の致死性、及び免疫応答への影響を検討した。 NAS2遺伝子については、遺伝子欠損アリルをヘテロにもつ親同士を掛合わせ、メンデルの法則に則った割合で野生型ホモ、ヘテロ、KOホモのF1マウスが得られた。NAS1について、KOホモのマウスは、胎生13日目には同法則に沿った個体数が存在するが、4週齢では予想される個体数の1割に留まり、生後4週までの死亡率の高さ及び生体におけるNASlの重要性が示唆された。 NAS1 KOマウスの免疫細胞(脾細胞と骨髄細胞)の分化を検討した所、野生型と大きな差は無かった。しかし、NASIKOマウスの骨髄細胞由来樹状細胞(BMDC)では、炎症性サイトカインIL-12p40の遺伝子発現誘導が野生型より著明に減弱した。NAS1 KO BMDCでは野生型に比べ、免疫担当細胞においてIL-12p40を誘導する転写因子IRF5の核内への移行が減弱していることがわかり、NAS1は主に核内に存在するにも拘らず転写因子の核移行を制御していることが示唆された。また感染実験より、NAS1 KOマウスは野生型に比ベリステリア感染に脆弱であることがわかった。一方NAS1野生型、KOそれぞれの胎児から調製した線維芽細胞では、細胞内核酸に対する自然免疫応答はほぼ同程度であった。これらは、NAS1が免疫担当細胞において特に重要な役割を果たすことを示唆する。 NAS1については、免疫担当細胞における機能について更に深く追究する必要性、また全身性遺伝子欠損マウスの致死性の高さから、免疫担当細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するマウス(Lysozyme_Cre及びCD11c-Creマウス)との掛け合わせが急務であり、現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
NAS1については、その全身性KOマウス由来細胞及びその個体を用いた解析により、NAS1が免疫担当細胞特異的な機能をもつこと、個体レベルでKOマウスがバクテリア感染に脆弱であることを明らかにすることができた。 また、免疫担当細胞以外における機能としては、線維芽細胞においてのみI型単純ヘルペスウイルスの複製に正に寄与することも明らかにしており、細胞内核酸認識分子のスクリーニングの段階では想定していなかったNASIの機能を多角的に解析し、多くの知見を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、NAS1について、既に計画の段階からは予想がつかなかった多くの知見が得られており、特にNAS1が細胞内核酸認識のみならず免疫細胞におけるシグナル伝達やにおいても重要な役割を果たす可能性や、上皮細胞においては逆にウイルスの複製に正に働くよう利用されている一面も明らかになりつつある。 今後は、主に核内に存在するNASIが転写因子の核移行を制御するその分子メカニズム、及びHMGBタンパク質をはじめとした既に知られている核酸免疫応答に関わる分子との関わりを明らかにすると同時に、例えばヘルペスウイルスの複製に関する実験系の検討等においては、研究室内に留まらずこれらの分野を専門とする研究者と積極的に討論し、必要に応じて共同研究を行うことも視野に入れる。
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Research Products
(1 results)