2013 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫系におけるHMGBタンパク質を中心とした新規核酸認識機構の解明
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12J04120
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
千葉 志穂 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 細胞内核酸認識機構 / 自然免疫 |
Research Abstract |
細胞内核酸認識に関与する候補分子として、マウス胎児由来線維芽細胞におけるスクリーニングから得られたタンパク質30種類のうち、2つの分子(ここではNAS1, NAS2とする)について、コンディショナル遺伝子欠損(cKO)マウスを用いた解析を行った。まず全身でCreリコンビナーゼを発現するCAG-Creマウスと掛け合わせて得た全身性遺伝子欠損(KO)マウス由来細胞を調製し、細胞内に核酸を導入する刺激を行ったところ、NAS2遺伝子欠損マウス由来細胞においては、野生型マウス由来細胞と同様に核酸誘導性のI型インターフェロン(IFN-b)、及び炎症性サイトカイン(IL-6, IL-12p40)の発現誘導が起こることが明らかになり、NAS2は核酸認識受容体コンプレックスとして機能していない可能性が示唆されたため、当該年度のその後の研究はNAS1に絞って行った。NAS1については、全身性遺伝子欠損マウスのバッククロスを継続して進めたところ、C57BL/6バックグラウンドでは、NAS1遺伝子欠損マウスは胎生致死であることが明らかになった。全身性遺伝子欠損マウスによる検討では、骨髄細胞由来樹状細胞を核酸刺激した際の転写因子IRF5の核への移行が、NAS1遺伝子欠損マウス由来細胞では50%程度低下していたため、ミエロイド系細胞において細胞種特異的に遺伝子欠損を行う目的で、Floxed-NAS1マウスとLysozyme-Creマウスとの掛け合わせを開始した。IRF5によって誘導されるIL-12p40はTh1応答を誘導するサイトカインIL-12のコンポーネントであるので、得られたミエロイド系細胞特異的遺伝子欠損マウスを、Th1免疫応答のモデルの一つであるリステリア感染に供し、その応答を評価した。ところが、ミエロイド系細胞特異的NAS1遺伝子欠損マウスにおいても、野生型マウスにくらべ、ほぼ同等の生存率を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ合成核酸を用いた自然免疫応答の解析において、NAS1の関与を示す結果を得られてはいないが、当該年度はコンディショナルノックアウトマウスを用いた感染モデルの検討を開始することが出来た点で、ある程度の進展が見られていると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた合成核酸を利用した解析による核酸認識機構の解明、という観点より、核内に核酸が曝露されるウイルスの感染・複製現象に対する宿主核内タンパク質の関与という視点の方が、研究をより大きく展開できる可能性があると考えられる。Flox-NAS1マウス由来細胞にレトロウイルスベクターを用いてCre遺伝子を導入し、細胞レベルでNAS1遺伝子次損させる系等、ウイルス感染を分子レベルで観察し易い系を立ち上げる。
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Research Products
(2 results)