2012 Fiscal Year Annual Research Report
農村女性の「主体化」と動員の力学‐戦後日本の民主化過程を中心に‐
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12J04162
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩島 史 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 農村女性 / 主体化 / 動員 / 生活改善 / 社会教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は、農村民主化過程を(A)女性の主観的な欲求に運動と、(B)それを動員する政策や社会的要請の両面から分析することである。本年度の成果を順に述べる。 (A-1)当時の女性たちの主観に接近できる資料の収集を中心に行った。戦前からの農民運動・社会運動などが盛んであった京都府北部において婦人会活動や農協婦人部活動のなかで執筆した文集の収集と、予備的な聞き取り調査を行った。また、農林省による生活改善普及事業の一環として開催されていた生活改善体験発表会の文集も収集した。これらの本格的な分析と成果報告は次年度に行う予定である。 (A-2)京都府と同様、戦前からの農民運動などが盛んに行われた長野県上伊那地方において、前年度に行った調査の分析を行い、国際学会で報告した。既存研究では、生活改善普及事業など女性の地位向上をめざす政策の成果として、農村女性の社会参画があげられているが、地域におけるリーダー的存在の女性に聞き取り調査を行った結果、当人の主観的位置付けにおいては、社会参画や政治参画の価値が相対的に低かったことが明らかになった。 (B-1)農村女性を対象とした政策として最も重要なものに、農林省が展開した生活改善普及事業がある。既存研究は同事業の制度面と地域での展開事例に関心が集中していたが、申請者は同事業の地域での展開をになった女性公務員である生活改良普及員のジェンダー規範に着目し、とくに1960年代においては実質的には農業の担い手になりつつ会った農村女性に「主婦」となることを要請していたことを明らかにした。 (B-2)上記で述べた、京都府北部を事例に、1950-60年代にかけて実施された農村女性を対象とした政策が地域においてどのように展開されたのか、調査を行った。具体的には農林省所管の生活改善普及事業、農協婦人部活動、文部省所管の婦人学級、公民館活動、および新生活運動協会による新生活運動について聞き取り調査と資料収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記で述べた通り、研究計画(A)(B)とも、計画通り調査をすすめ、その一部については国際学会および査読付き雑誌論文での成果報告を本年度中に行うことが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行った調査をもとに、(A)については分析をすすめ、学会や研究会での報告をふまえて精緻化し、次年度前半に『村落社会研究』に投稿する。(B)については京都府北部での調査を継続するととともに、長野県での調査も行い、両者を比較しながら地域での農村女性政策の展開について分析していく予定である。
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Research Products
(2 results)