2012 Fiscal Year Annual Research Report
壊死細胞に対する免疫応答の分子機構および生理的意義の解明
Project/Area Number |
12J04202
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木村 俊文 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Nogo / PIR-B / TLR9 / 炎症応答 / マクロファージ |
Research Abstract |
自己由来壊死細胞に対する免疫系の異常な活性化は自己免疫疾患の原因となる。壊死細胞から放出された核酸はTLR9に認識され炎症応答を惹起する。抑制性免疫受容体PIR-BはTLR9の活性化を阻害し、自己免疫疾患発症を抑制している。PIR-Bが免疫細胞における機能が未知であるNogoタンパク質と結合することが報告されたため、NogoがTLR9刺激応答に関与し炎症応答を制御する可能性を検討した。 本年度における研究において、Nogo欠損マクロファージは野生型と比較して、TLR9刺激に伴うサイトカイン発現が顕著に減弱することを見出した。TLR9発現量並びにTLR9活性化に必要なリガンドの細胞内への取り込みとエンドソームへの移行をFACSと共焦点顕微鏡観察により評価したが、Nogo欠損マクロファージではいずれも野生型と同等であった。 そこでTLR下流のサイトカイン発現に重要な転写因子NF-_KBとp38のTLR9刺激に伴う活性化レベルを解析した。Nogo欠損マクロファージは野生型と比較して、NF-_KBとp38活性化レベルが著明に低い状態に留まることが観察された。従ってNogoはTLR9からNF-_KB/p38活性化に至るシグナル伝達経路で機能すると示唆された。続いてTLR直下で、シグナルを伝達する分子であるIRAK1のTLR9活性化後の挙動を解析したところ、野生型細胞ではIRAK1タンパク質は刺激後速やかに分解されるが、Nogo欠損マクロファージではIRKA1の分解が遅延するという結果を得た。 従って、Nogoタンパク質はTLR9からIRAK1へシグナルを伝達する過程に関与しており、刺激誘導性のサイトカイン産生を正に制御する分子であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NogoがTLR9下流のシグナル伝達機構を正に制御し、炎症応答に関与する分子であると明らかにした点において、本研究は順調に進展している。NogoによるTLRシグナル制御機構の詳細な分子メカニズムについては更なる検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
自己由来壊死細胞に対する応答に焦点を限定せず、感染応答などTLRが関与する免疫応答全般についてNogoの機能解明を目指す。PIR-Bあるいは他の結合分子を介してNogoはTLRシグナルを制御すると考えられるので、in vitroにおける各種研究手法を利用して必要ならば新規Nogo結合分子を同定し、NogoによるTLRシグナル制御の分子機構を明らかにする。また、Nogo欠損マウスを使用して感染・ストレス刺激を行い、個体レベルの免疫系におけるNogoの生理的機能の解析を行う。
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Research Products
(2 results)