2014 Fiscal Year Annual Research Report
近代中国における「イスラーム民族」の創出と変容-ムスリム社会と国家の関係を中心に
Project/Area Number |
12J04209
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山﨑 典子 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 民族 / 宗教 / ナショナリズム / エスニシティ / 中国 / イスラーム / 回族 / ウイグル |
Outline of Annual Research Achievements |
民族・宗教問題が世界各地で深刻さを増している今日、ネイションやエスニシティ、信仰に関する議論がいたるところで行われている。本研究は、歴代政権によって漢人の宗教集団と見なされてきた中国の漢語を話すムスリム(現在の回族にほぼ相当)という新たな研究視角から、エスニシティと信仰の動的関係を解明することを目的とする。このことによって、多元的価値観を持つ人間同士が共存する方法を考えることが、本研究の意義であり目標でもある。 これまでは、20世紀初頭に「民族」「宗教」について興味深い議論を行っていたムスリム・エリート(宗教指導者、知識人、教育家、軍人、ジャーナリストなど)の言説を分析の主な対象としてきた。本年度は言説のみならず、ムスリム・エリートの政治行動やムスリム民衆の日常生活におけるアイデンティティ表出の問題を複眼的に論じるために、ムスリムの(a)移動(b)教育(c)食(d)民間伝承について調べた。具体的には、第一に、漢語やテュルク語で書かれた各種史料を精読した。また、中国社会科学院民族学与人類学研究所に訪問研究者として滞在し、各図書館・文書館での史料収集やモスクでの調査を行った。第二に、(a)~(d)のテーマについて、日本国内では3回(うち一回は英語を使用)、中国国内で1回(中国語)研究成果を発表し、複数の言語で論文を書いた。 これらの研究活動によって、20世紀初頭の中国ムスリムの教育改革においてオスマン帝国やロシア帝国出身のムスリムが重要な役割を果たしたこと、中国ムスリムと国外のイスラーム世界の関係がマッカ巡礼によって深化したこと、非ムスリムとの食習慣を巡る争いを背景とするムスリムの強烈な「清真」(ハラール)意識や祖先が「西域」から来たという「西来」意識が「回」「漢」のアイデンティティ・マーカーとして機能していたことを、明らかにした。
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Research Progress Status |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(8 results)