2012 Fiscal Year Annual Research Report
生物輸送管ネットワークの適応過程に着想したネットワーク最適化
Project/Area Number |
12J04255
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡邊 晋 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 真正粘菌 / 電力網 / 最適化 |
Research Abstract |
本研究の目的は生物の輸送管ネットワークに着想したアルゴリズムを応用して最適電力網設計を行うことである.今年度は電力消費量が変動する小規模な系でのシミュレーションと分析を行った.計画では中・大規模ネットワークでの数値計算も行う予定であったが,より単純な系での数理的な解析を重点的に行った. 発電所1つと需要家2つにより構成された系で電力消費量が位相差を伴って正弦振動した場合の電力網設計を行った.数値計算により得られたネットワーク形態について,ネットワークの成長に関わるパラメータμと需要家間の位相差φという2つのパラメータに対する依存性を調べた.成長パラメータμが小さい場合はネットワークがメッシュ状になり,大きい場合は樹状になるという傾向が得られた.ネットワーク形態の位相差φ依存性についても新たに発見できた.特にμが大きい場合,φ=0(同位相)に近いとネットワークはV字型(発電所から各需要家までの電線が独立している)に形成され,φ=π(逆位相)に近いとY字型(発電所から各需要家までの電線が共通部分を持つ)に形成される傾向があるということがわかった. 電力損失,材料費,脆弱性の評価関数を定義して得られたネットワークに適用した.その結果,評価関数のバランスが良いネットワークはμ=1.5辺りで得られることなどがわかった. ネットワーク形態のパラメータ依存性を数理的に理解するために,ネットワークサイズを小さくした系で定常解の安定性解析と吸引域計算を行った.その結果,成長パラメータμ≦1のときに単安定となり,μ>1のときに多重安定となることや位相差φ依存性が吸引域の差異によるものであることなどがわかった.以上の結果によりアルゴリズムをネットワーク設計に適用する際のパラメータ設定の基準が明らかになった.今年度で達成できなかった中・大規模ネットワークについては今後研究を進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り小規模な系における電力消費量の変動を考慮したネットワーク設計を行い,得られたネットワークのパラメータ依存性およびその特徴を分析することができたため,中・大規模ネットワークにおける電力網設計は未達成であるが,単純なネットワークにおける平衡解の線形安定性解析と吸引域計算による数理的解析を重点的に進めることができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
未達成となっている中・大規模ネットワークにおけるシミュレーションを行う.得られたネットワークについて,電力損失,材料費,脆弱性を表す評価関数を用いて評価を行う.複数の需要家を設置するため位相差というパラメータでは分析が困難になる.そこで,位相差のばらつき度合いを測るオーダーパラメータを導入する.発展的な課題として,週・年周期で需要量が変動する系や需要家毎に変動量の最大値が異なる系でのシミュレーションを行い,日変動させた場合や変動量の最大値が一様な場合での計算結果との比較を行う.現実系により近いシミュレーションを行うために各需要家の消費電力の時系列データを用いてアルゴリズムの有用性を検証する.
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Research Products
(5 results)