2012 Fiscal Year Annual Research Report
垂直磁化Co/Ni細線における電流駆動磁壁ダイナミクス
Project/Area Number |
12J04256
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 浩平 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | スピントロニクス / 磁壁電流駆動 / スピントランスファー / スピン分極率 |
Research Abstract |
磁壁電流駆動現象は磁区と磁区との遷移領域であるナノスケールの磁壁を電流で駆動させる現象である。この現象はその物理機構だけでなく、次世代の不揮発性メモリへの応用の観点から世界中で盛んに研究されている。まず、その物理機構は伝導電子から磁壁内部の局在スピンへのスピン角運動量移行によって説明される。これをスピントランスファー機構と呼ぶ。この機構の理解を深めるために我々は垂直磁化Co/Ni細線における磁壁電流駆動研究を行ってきた。その結果、我々はCo/Ni系における磁壁電流駆動はスピントランスファー機構によって説明できると実験的に証明してきた[T.Koyama, K.Ueda et al., Nat. maters(2011)]。スピントランスファー機構が支配するCo/Ni系を用いて、材料定数で重要なスピン分極率の評価法を確立することを目的とする。Co/Ni細線における磁壁電流駆動はスピントランスファー機構で説明できることを述べた。それにより磁壁移動速度(v)は、(1)式で記述できスピン分極率(P)を決定できることができる。Pは、物質固有の材料定数である。v=μEPI/eMS,μB-(1):ボーア磁子,e:電荷素量,MS:飽和磁化を示している。最初に、vの電流密度依存性が高周波低温プローバーによって測定された。電流印可時におけるデバイスの発熱が避けられないために、電流印可時におけるデバイス抵抗の変化を測定することによって実際のデバイス温度(Td)が見積もられた。(1)式から、Co/Ni細線におけるPの温度依存性が見積もられた[Fi&1]。またインセットには超伝導量子干渉計で測定されたMsの温度依存性が示されている。Fig.1よりPは高温になるにつれ減少していき100K-530Kまでの広範囲の領域で観測された。このように低温から室温以上のキュリー点付近(磁石の性質が消失する温度)までの領域でPが評価されたのは世界で最初の報告で新たなるPの決定手法である。さらに、PがMsよりも早く減少していくのはマグノン散乱により定性的に説明されることも分かった。本研究の成果は、論文として出版された[K.Ueda et al., Appl. Phys. Lett.(2012)]。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画として重要だった、スピン分極率評価法の確立に成功し論文[K. Ueda et al., Appl. Phys. Lett.(2012)]としてまとめて出版したからである。あとは、材料を変えて同じ実験を行うだけなのでおおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
Co/Ni細線における磁壁電流駆動を利用したスピン分極率の評価法を確立し論文として出版した。次の計画は、Co/Niの膜厚比率などを変えて材料定数で重要なスピン分極率がどのように変化するか評価する。
|
Research Products
(4 results)
-
[Journal Article] Temperature dependence of carrier spin polarization determined from current-induced domain wall motion in a Co/Ni nanowire2012
Author(s)
K. Ueda, T. Koyama, R. Hiramatsu, D. Chiba, S. Fukami, H. Tanigawa, T. Suzuki, N. Ohshima, N. Ishiwata, Y. Nakatani, and T. Ono
-
Journal Title
Applied Physics Letter
Volume: 100
Pages: 202,407
DOI
Peer Reviewed
-
-
[Presentation] Temperature Dependence of Current Induced Magnetic Domain Wall Motion in a Multilayered Co/Ni Nanowire with MgO Cap2013
Author(s)
K. Ueda, R. Hiramatsu, K. -J. Kim, D. Chiba, T. Moriyama, H. Tanigawa, E. Kariyada, T. Suzuki, Y. Nakatani, T. Ono
Organizer
アメリカ物理学会2013
Place of Presentation
Baltimore Convention Center, US
Year and Date
20130318-20130322
-
[Presentation] 磁壁ダイナミクスから決定したCo/Ni細線におけるスピン分極率の温度依存性2012
Author(s)
上田浩平, 小山知弘, 平松亮, 千葉大地, 深見俊輔, 谷川博信, 鈴木哲広, 大嶋則和, 石綿延行, 仲谷栄伸, 小野輝男
Organizer
PASPS-17
Place of Presentation
九州大学伊都キャンパス
Year and Date
20121219-20121220