2013 Fiscal Year Annual Research Report
苦味受容体の遺伝的多様性がチンパンジーの地域特異な採食行動にもたらす影響の解明
Project/Area Number |
12J04270
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早川 卓志 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 霊長類 / チンパンジー / 亜種 / ゲノム進化 / ゲノム多様性 / 味覚受容体 / 苦味 / 熱帯アフリカ |
Research Abstract |
本研究は「苦味受容体の遺伝的多様性がチンパンジーの地域特異な採食行動にもたらす影響」を解明することが目的である。初年度で行った研究を前進させ、更に次世代シークエンサーを用いたゲノム-生態相関の解明に向けた実験手法を確立し、実データを分析した。 1. 野生チンパンジーの苦味受容体遺伝子多様性の決定 前年度までに収集した、ギニア・ボッソウ地域と、タンザニア・マハレ地域のチンパンジーの排泄物由来のDNAに関して、個体由来の塩基配列決定に必要な分析評価系を構築し、実際にチンパンジーが持つ苦味受容体遺伝子28種類のうち、TAS2R38とTAS2R46という遺伝子について、これらの収集された全個体のDNAにおいて配列決定を行った。その結果、偽遺伝子多型を含む東西の地域差を明確に見出した。更にボッソウとニンバの間にも頻度に差があり、何らかしらの特異な遺伝構造を見出した。以上の結果は日本霊長類学会で口頭発表し、発表優秀賞という形で評価された。 2. 真主齧類苦味受容体遺伝子ファミリーのゲノム進化史の解明 真主齧類28種(個体差も含めて39データセット)の全ゲノムデータ配列セットから、苦味受容体遺伝子を網羅的に計算機的に検索し、真主齧類ワイドでの進化史を明らかにする研究を行った。その結果、ヒトやチンパンジーを含む真猿類の共通祖先で、食性適応に関係すると考えられる苦味受容体遺伝子レパートリー拡大が起きたことを発見した。7月に分子進化学の英文専門誌に投稿し、査読を経て、3月現在、改稿中である。 3. 次世代シークエンサーによる野生霊長類DNAの網羅的分析 糞由来のDNAには個体のDNAだけでなく、腸内細菌や食物のDNAも含まれている。そこで、次世代シークエンサーMiSeqを用いて個体のDNAのみを網羅的に決定することを試みた。個体のDNAに関してはボッソウで収集した野生チンパンジーの糞由来DNAを用い、エクソームキャプチャーという方法を介して、MiSeqにより全エクソン配列の網羅決定を試みた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は採用初年度に収集した野生チンパンジーのDNA試料に分析を予定通り進めることができた。更に次世代シークエンサーを用いて、より深い理解につなげるデータを得ることができ、研究の広がりを生み出すことができた。また、平行して進めてきた苦味受容体の比較ゲノム解析の論文を英文専門誌に投稿することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
苦味受容体研究という観点からの野生チンパンジーの生態調査、ゲノムレベルでの遺伝的多様性の解析に関して、基盤的なデータをこれまでに積み重ねることができた。最終年度では、これらの基盤データを実証する細胞解析や行動実験を行うことを視野に入れ、苦味受容体の個体差・地域差の進化的理由を明らかにするとともに、投稿論文と学位論文の執筆を行う。
|
Research Products
(12 results)