2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J04281
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
磯山 総一郎 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 重力波 / 一般相対論 |
Research Abstract |
巨大ブラックホール周りを周回する中性子星をはじめとするコンパクト天体からなる質量比の大きい連星系から輻射される重力波を将来の重力波観測で捉えられれば、曲がった時空を直接探査することができる。本研究課題はプラックホール時空上の有限質量をもつ質点でこの連星系をモデル化し、まず波源である質点の軌道運動、特に観測的に重要となる長時間の軌道発展の正確な理解を目標としてきた。 本年度は現実的に重要となる回転ブラックホール時空に注目し、質点の有限質量による補正、すなわち質点の自己重力場が質点に及ぼす反作用力 : 自己力が運動に与える影響のうち、長時間の軌道発展に与える部分のみを簡便に抽出する定式化を行った。まず、既に提案されていた遅い時間変数を導入した二つの時間変数を用いた定式化を利用することで、質量比の一次の摂動を輻射的な成分(遅延場と先進場の差で与えられる成分)と対称的な成分(遅延場と先進場の和で与えられる成分)の寄与に分類し、さらに自己力を含む運動方程式をハミルトン形式で書き直すことで、有限質量に伴う補正は単一のスカラー関数である有効ハミルトニアンの評価のみが必要であることを明らかにした。特に通常の自己力が軌道に沿った各点で4成分の評価が必要であることに比べると著しい情報の圧縮になっており、実用計算を大幅に簡略化することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
技術的困難が予想以上であったため、年度内には得られた定式化を研究成果として論文発表できなかった。しかし、新年度早々に結果を論文として公表できた・をふまえると、この遅れは短期的なものであり、今後の研究の推進に対して大きな妨げになるものではない、と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題で得られた質点の長時間の軌道発展を記述する簡便定式化を用いて、質点から輻射される重力波形を実用計算するスキームを開発し、その具体波形を導出することが今後の最優先課題である。
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Research Products
(7 results)