2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J04343
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐々木 啓 慶應義塾大学, 経済学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 総力戦体制 / 戦時労働力動員 / 徴用 / 皇国勤労観 / 隣組 / 労働争議 / 戦時統制経済 / 軍需産業 |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦時期日本の労働力動員政策によって動員された人びとの労働、生活、意識の実態を明らかにすることにあった。具体的には、軍需産業に動員された人びとの、(1)労働環境や生活環境の実態の分析と、(2)意識や行動についての主体に即した分析を行った。 (1)については、日本近現代史や諸外国の現代史、労働経済にかかわる基礎的な研究文献・史資料を進めた。とりわけ、戦時下における都市社会の生活の中心となった、隣組・町会などに関する史料を収集し、分析を加えた。これによって、一般的に労働過程のみに注目が集められてきた戦時下労働者の、生活過程の実像の一端を示すことができた。 (2)については、計画通り、動員された人びと自身が記した記録類を収集・分析して、個々の体験の特質と、そのなかでの意識動向について、検証した。とりわけ、軍需生産の中心地の一つである神奈川県川崎市の労働者の体験記録を対象として研究を進めた。戦時統制経済が破綻していく状況の下で、人びとがどのようなかたちで生存をつないでいったのかを分析し、それが地縁・血縁・同僚など、日常的な人間関係のネットワークの態様に規定されていることを明らかにした。 こうした作業に加えて、戦時下における労働争議と戦後初期の労働争議に関連する史料を収集し、その比較分析を行った。分析を通して、皇国勤労観が、労働者の生活を守る手段として戦時下の労働争議のあり方に大きな影響を与えていることを確認するとともに、戦後初期においては、それが過酷な労働の強制を象徴するイデオロギーとして理解されていくことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「労働力動員政策によって動員された人びとの労働、生活、意識の実態に迫る」という、もともとの研究目的について、労働争議の分析など、やや方法を変えた部分もあるが、概ね計画にそって研究をすすめているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、初年度であったこともあり、史資料の収集や、研究会などでの口頭発表を軸に研究を進めてきたが、来年度以降は、これらの蓄積をふまえて、論文などの形で活字化することを追求していきたい。また、そうした研究のアウトプットをより豊かなものにするためにも、戦時下において動員された労働者たちの記録資料の収集をさらに強化したいと考えている。
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Research Products
(3 results)