2012 Fiscal Year Annual Research Report
食中毒原因菌の定量的リスクアセスメントのための高感度な世界的標準検査法の開発
Project/Area Number |
12J04353
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 夏子 京都大学, 東南アジア研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 腸炎ビブリオ / 腸管感染症 / リスクアセスメント / 免疫磁気ビーズ法 / LAMP法 |
Research Abstract |
本研究では、重要な食中毒原因菌である腸炎ビブリオを、魚介類から簡便・安価でかつ高感度に検出する世界標準検査法(免疫磁気ビーズ[IMS]法とLAMP法を導入)の開発と、安全性基準値の提言を目指す。1年目に計画していた2項目について、以下に研究成果を述べる。、 【1】新検査法のプロトコールの確立や性能評価、といった基礎研究。 これまでに技術的な改良を積み重ね、新検査法のプロトコールは確立した。特に、本研究にユニークな取り組みとして導入したPickPen(磁気ビーズ回収デバイス)が、本検査プロトコールの操作性と検出感度を向上させる上で果たした役割は大きい。 本研究の要となっている2つの技術(IMS法とLAMP法)の性能評価は、三重県保健環境研究所において、地元・三重県産の二枚貝を用いて実施した。その結果、IMS処理に病原性株を100倍程度濃縮する効果があること、また、 LAMP法を導入することにより検出感度が大幅に向上すること、が確かめられた。従って、これらの技術を組み合わせた新検査法は、高感度な検査法となりうることが期待される。 【2】国内外でのフィールドサンプリング・解析を通じて、新検査法の有効性を評価する。 2012年3月、タイ南部・ハジャイ市において、地元産二枚貝を用いて、従来法と新検査法の比較試験を行った。その結果、ある問題(「12.今後の研究の推進方策」参照)により、新検査法が従来法よりも優れていることは示せなかったものの、いずれの方法でも、解析した全検体からtdh-Vpが検出され、しかも、そのMPN値は、二枚貝10g当たり930~110,000と、予想をはるかに上回った。地元の人々が、日常的に利用しているモーニング・マーケットの二枚貝から、これほど高濃度のtdh-Vpが検出されたのは、公衆衛生上憂慮すべき事柄であり、本研究を通じて今後さらなる調査が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、新検査法の実施要領は確立し、その一部を近畿腸管微生物研究会(大阪,H24年6月)にて報告した。また、これまでの研究成果をまとめた論文を現在執筆中であり、今年度半ばまでに学術誌へ発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、国内外の複数の拠点で季節ごとのデータ収集・解析を行うための方法論を確立・実施する。従来法と新検査法により得られた定量データから、二枚貝中の腸炎ビブリオのリスクアセスメントを実施し、新検査法による精度の向上を査定する。併せて、二枚貝中の腸炎ビブリオの安全性基準値を提言する。 問題点としては、タイの調査において明らかとなった、遺伝子検査における擬陰性の問題である(従来法・新検査法とも)。二枚貝は種類や生産地、季節等によって、その中に含まれるマイクロフローラや、遺伝子検査を妨害する阻害物質などが異なり、増菌培養や遺伝子検査に影響しうるため、多様な二枚貝サンプルを用いて、詳細な検証を行う必要がある。
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Research Products
(1 results)